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コリンはメチル化で誕生する
今日もFC2の調子が変です(T_T)
更新するのが遅れましたが、ご容赦ください。
葉酸の話も長くなりました。
最初はこんなに長くなる予定じゃなかったんですが……
書いているうちに「これも追加したい!」という話が、
次から次に出てきてしまいます。
ホンと、計画性がないので困ったものです。
さて。
今日のテーマはメチオニン回路によるメチル化(methylation)です。
その前に、昨日はビタミンB12の欠乏によって生じる障害を紹介して終わりました。
1.悪性貧血
2.中枢神経系(CNS)の代謝異常
3.動脈硬化による脳の虚血
メチオニン回路が回転しないと、
5-THF(5-メチルテトラヒドロ葉酸)はTHF(テトラヒドロ葉酸)に戻りません。
葉酸回路とメチオニン回路は連動しているので、
片方の回転が悪いともう片方の回転も鈍くなってしまうは当然!
そこで思い出していただきたいのですが、
葉酸回路ではプリンの合成が行われていました。
メチオニン回路によるメチル化が滞るとTHFが不足し、
結果的にアデニン、グアニンというプリン塩基の不足を招きます。
するとDNA合成に障害が生じますから、
細胞分裂が上手く行われなくなってしまうのです。
その一例が、赤血球の生産です。
赤血球は骨髄で成長して血管に放出されますが、
ビタミンB12が不足すると一人前に成長できず、
骨髄の中で壊れてしまいます。
これを無効造血といい、赤血球が不足することから貧血になるわけです。
ビタミンB12が1948年に発見されるまでは根本的な治療法がなく、
致死的な病と恐れられたことから悪性貧血と呼ばれました。
造血障害は赤血球だけでなく、白血球でも生じることはいうまでもありません。
脳は大量の酸素とエネルギーを消費するため、
赤血球不足は脳の活動にも悪影響を及ぼします。
そればかりか、
メチオニン回路の回転が悪くなると血管も脆くなってしまう。
つまり、動脈硬化を起こすのです。
動脈硬化の”犯人”はコレステロールと名指しされていることから、
コレステロールの摂取を控えている方も多いでしょう。
ただし食物からの摂取量は全体の20%程度に過ぎず、
残りの大部分は体内でアセチルCoAから生合成されます。
このため食事はあまり関係ないという意見も根強く、
コレステロール値が低くても動脈硬化になることすら珍しくないようです。
反対に、近年になって動脈硬化の新たな”犯人”に注目が集まっています。
それが、ホモシステインです。
ホモシステインは【悪玉コレステロール】と呼ばれるLDLリポタンパク質に結合し、
血管壁への沈着を促進することがわかってきました。
ところがホモシステインからメチオニンの再生が停滞すると、
血液中のホモシステイン濃度が上がってしまいます。
これをホモシステイン血症といいます。
ホモシステインを動脈硬化の危険因子とする認識が強まっています。
細い血管が網の目のように張り巡らされているため、
もともと脳は狭窄や閉塞による脳虚血を起こしやすい臓器といえるでしょう。
そこに動脈硬化が加わるのはとてもハイリスクで、
脳細胞が壊死してしまうと脳梗塞、血管が破裂してしまえば脳卒中です。
そこまで深刻な事態にならなくても、
血液の循環が悪くなれば脳は酸素不足と栄養不足に陥ります。
そうなれば、脳の機能が低下することは避けられません。
いかがですか?
葉酸回路やメチオニン回路って、脳の機能維持にとても重要でしょ?
そして、次はいよいよ【メチル化】です。
体内のメチル化反応は膨大な数にのぼりますが、
それを全部紹介するのはとても不可能です。
ここでは代表的な一例として、リン脂質代謝を紹介します。
最も代表的なリン脂質はレシチンです。
正しくはホスファチジルコリン(Phosphatidylcholine)といいますが、
名前からわかるように構造中にコリン(Choline)を含有しています。
コリンといえば神経伝達物質のアセチルコリン(Acetylcholine)が有名ですが、
まず最初にリン酸基の結合したホスホコリンとして合成されます。
”原料”となるのはホスホエタノールアミンです。
アミノ基(-NH2)の水素(H)をメチル基(-CH3)に置換するのですが、
この化学反応に SAM (S-アデノシルメチオニン)が活躍します。
これがメチル化(methylation)に他なりません。
2ヶの水素(H)がメチル化されれば第3級アミンですが、ここで終わらない。
さらにもう1ヶのメチル基がくっ付いた第4級アンモニウムがコリンになります。
こうしてホスホエタノールアミンからホスホコリンを合成するために、
メチオニン回路は3回転して3回のメチル化を行うわけです。
レシチンは細胞膜を構成するには欠かせないリン脂質です。
さらに神経細胞の場合には、細胞体から軸策を伸ばしています。
これは電気信号を伝える”配線”のようなもので、
漏電しないように髄鞘(ミエリン鞘)で保護されるのが有髄線維です。
この髄鞘にはスフィンゴリン脂質と呼ばれる特殊なリン脂質が用いられます。
樹状突起に伝達されたシグナルはシナプス後電位(PSP)として細胞体に集まります。
ただし、これだけで神経細胞が活動するわけではありません。
シナプス後電位には興奮性(EPSP)と抑制性(IPSP)のものがあり、
この総合が軸索小丘で一定の値(閾値)を超えたときに初めて活動電位が発生します。
ただしシナプス後電位と違うのは、活動電位は『全か無かの法則』に従います。
発生する際にはフルサイズで発火し、そうでない場合にはゼロです。
つまりシナプス後電位はアナログ式、活動電位はデジタル式ということです。
神経終末に到達した電気シグナルは化学シグナルに変換され、
神経伝達物質を放出して次の神経細胞の樹状突起にシグナルを伝達します。
脳の活動は単純な電気信号のON-OFFではなく、
いくつものバトンタッチを繰り返す複雑なシステムを採用しています。
そのおかげで、状況に応じて変化できる柔軟な可塑性を実現したわけです。
【図】は最も代表的なスフィンゴミエリンの一例ですが、
薄い水色で着色した部分にご注目ください。
ここにもコリンが使用されているでしょ?
レシチンの場合と同じように、やっぱりメチル化によって合成されたものです。
それでは、リン脂質やスフィンゴリン脂質の合成がおかしくなると
いったいどんな問題が生じてくるのでしょうか?
リン脂質代謝の不具合は、細胞膜の崩壊につながります。
二重膜構造を維持できずにミセル化してしまうのです。
そして、細胞膜を”失った”神経細胞は”死”に向かうしかありません。
20歳頃に成長のピークを過ぎると、
脳細胞は1日に10~20万個も死滅するといいます。
もっとも全体では約150億個もあるので微々たるものですが、
これが長年続けば【脳の老化】を招くことになります。
ただし、そのスピードが遅いか早いかの違いは大きい筈です。
スフィンゴリン脂質代謝の不具合は髄鞘の形成不全(脱髄)を起こします。
簡単にいえば神経が漏電を起こしてしまうため、
神経の電気シグナルがきちんと伝達されなくなるとご理解ください。
その結果起こる障害が、
多発性硬化症のような中枢性脱髄疾患という病気です。
このように、コリンは細胞膜や髄鞘を形成するのになくてはならない化学物質。
しかしメチオニン回路の停滞はコリン不足を招く――
そのために、様々な神経変性の一因となってしまいます。
中枢神経(Central Nervous System/CNS)の機能を維持していくためには、
メチル化は生命にとってとても重要な化学反応なのです。
そこで明日は、シックハウスとメチル化の関係を考えてみましょう。
ちなにみ。
女優の大原麗子さんで有名になったのが、
ギラン・バレー症候群という聞きなれない病気です。
これも神経細胞の脱髄を伴う急性の多発性神経炎です。
ただし原因は葉酸やビタミンB12の欠乏ではなく、
今のところ自己免疫疾患と考える説が有力のようです。
手足の痺れはもちろん、急に手や足の力が入らなくなる難病で、
症状が重いケースでは動くことや呼吸さえできなくなるといいます。
大原さんも、さぞ辛い闘病生活を送っていたのでしょう。
心よりご冥福をお祈りいたします。 ブログランキングに参加しています。
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