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日本が自殺大国になった理由

2010 - 11/03 [Wed] - 15:48

急に寒くなりました。
慌てて蓄熱暖房機の運転を開始――
おかげで室温は22℃、家の中はポカポカ陽気です。
そういえば、今日は「文化の日」らしい。 私は仕事です(=_=)
それなら、ちょっとアカデミックに参りましょう。

さて……
幕末から明治にかけてたくさんの外国人が日本にやってきますが、
彼らの残した記録には大変興味深い指摘があります。
お世辞抜きで天国-paradise-のような国だと絶賛し、
口を揃えて、日本人は幸福で満ち足りていると驚嘆しているのです。

1876年に来日して英語を教えたディクソン(J.M.Dixon)は、
東京の庶民の様子を次のように描写しています
 
  彼らは生活の厳しい現実に対して、ヨーロッパ人ほど敏感ではないらしい。
  西洋の群集によく見かける心労にひしがれた顔つきなど全く見られない。
  頭をまるめた老婆からきやっきゃっと笑っている赤児にいたるまで、
  彼ら群衆はにこやかに満ち足りている。


日本人の明るさはよほど印象深かった様子で、
同じような印象を多くの外国人が口にしています。
 
  この民族は笑い上戸で心の底まで陽気である(L.Beauvoir)  
  日本人ほど愉快になり易い人種はほとんどあるまい(R.Lindau)


笑い声に満ちた国――、外国人は度肝を抜かれたらしい。
そりゃそうでしょ!!!
前回紹介したように、日本人とヨーロッパ人では ALDH2 が違います。
そのおかげで日本人は脳内のドーパミン濃度が高いのです。
だから、たとえ苦しくっても前向きに生きていける――
私達の祖先は、極寒のシベリアでも希望を失わずに逞しく生き抜きました。
日本人にはその血が脈々と流れております。

ところが、最近はどうも様子が違ってきたのかも……
そこで次のグラフをご覧ください。

図をクリックすると拡大します
suicide-1

これは主要先進国(G8)の自殺死亡率を比較したものです。
【自殺死亡率】とは人口10万人あたりの自殺者数で、
欧米諸国に比べて日本の自殺死亡率の高さが際立っています。
ソ連邦崩壊後の混乱期にあるロシアの特殊事情を考えれば、
先進国中、日本は最も自殺の多い国――
そういわれても仕方ございません。 (+_+)
かつての、明るく満ち足りた国民の面影はどこにもありません。

どうしてこんなことになってしまったのか?
今日はデータを駆使して自殺(suicide)を考えてみましょう。 

それでは、本題の始まり。
まず最初に、厚生労働省の人口動態統計によって、
日本の自殺者数の推移を見てみましょう。

図をクリックすると拡大します
suicide-2

戦後の自殺者数の推移には3つのピークがあります。
最初のピークは戦後の混乱期で、
自殺者数ははじめて2万人を突破します。
高度経済成長の開始とともに自殺者は減少しますが、
石油危機をきっかけに再び増加に転じる。
そして1985年のプラザ合意による円高ドル安によって輸出産業が大打撃を蒙ると、
自殺者数は第2のピークを迎えます。
こうした円高不況を打開すべく自民党政権は超低金利政策を打ち出し、
日本は空前のバブル景気に沸きかえったわけですね。
懐かしいですね~~~、覚えてますか?

しかし、”泡”は呆気なくはじけました。
1990年代、日本は平成不況に突入し、
いつまでも負の遺産に苦しめられることになる。
不良債権による金融不安により、
1997年には山一證券が自主廃業、拓銀も経営破綻、
足利銀行の株価が1円に暴落したのも同じ年の事だったような……
銀行がこければ会社もこけるわけでして、
世の中には倒産やリストラの嵐が吹き荒れました。
その影響で1998年に自殺者は一気に3万人を突破し、
この第3のピークが今日まで続いているわけです。

最新の2008年(平成20)のデータでは自殺者の総数は30,229人。
内訳は男性が21,546人、女性が8,683人となっています。
そう聞いてもピンときませんか?
それならこう言い換えましょう。
1日に82人が自殺し、
日本のどこかで17~18分ごとに誰かが死を選んでいる――
これが経済大国日本の悲しい現実です。

こうした自殺者数の推移を概観すると、
自殺と景気動向に密接な繋がりがあるように思えます。
つまり、不況になると自殺者が増える――
「日本における自殺の精密分析」(1999年)という論文でも、
景気変動と自殺には相関が見られ、
不況で自殺者数は約30%増加すると分析しております。

ただし論文では、
景気依存性よりも重要な点として年齢依存性を指摘しています。
児童や若者の自殺が社会の注目を集めますが、
実際には、自殺者は中高年の方が圧倒的に多いのです。
ここで思い出していただきたいのですが、
ドーパミンを分解する MAO という酵素は40歳代から活性化します。
そのため、加齢とともに脳内のドーパミン濃度は低下する。
こうした変化が自殺の年齢依存性に寄与してしまうのでしょう。

そして、1990年代後半には団塊世代が50歳を迎えます。
つまり自殺好発年齢に突入したわけで、
このことが自殺者急増の根本的な原因――
論文ではそう結論しています。
もしそうであるならば、
たとえ経済が好転しても自殺問題は解消されません。
日本は世界一の長寿国になりましたが、
皮肉なことに、
超高齢化社会になるほど自殺者も増えるということらしい。

いかがですか?
日本が自殺大国になった原因は高齢化不況みたいです。
ご納得いただけたでしょうか。

確かにこの指摘はごもっともなんですが、
実は、私はこれだけで納得できない…… (?_?)
考えてもみてください。
苦しくなればすぐ死を選ぶほど、人間は弱い生き物ですか?
生活が苦しくても、逞しく生きている人はたくさんいます。
たとえお年を召しても、活力に満ちた若々しい方もたくさんいる。
冒頭のエピソードから推測すると、
かつての日本は、むしろそういう方々に満ち溢れていました。
そこで、次のグラフをご覧ください。

図をクリックすると拡大します
suicide-3

これは日本とアメリカの年齢別自殺死亡率(男性)を比較したものです。
アメリカでは年齢が高くなるほど自殺死亡率も高くなっており、
他の欧米諸国でもほぼ同じ傾向だといいます。
なるほど、これなら年齢依存性で上手く説明できそう。
ただし、日本の場合はちょっと違う。
50歳代後半をピークにして、40歳~60歳が膨らんでいます。
単純に、高齢化によって自殺大国になった――で終わっては不十分なのでは?

私は自殺も立派な”病気”だと思うのです。
つまり、心の病(psychosis)というわけ。
日本の自殺者急増を理解するには、
精神医学的観点からの分析が不可欠なのではないでしょうか?
そこで、心の病について考えることにしましょう。
世界保健機関(WHO)の「自殺とこころの病」(2002年)によれば、
自殺と心の病の関係で最も多いのがうつ病(depression)だとされています。

suicide-4

厚生労働省の患者調査によれば、
日本のうつ病と躁うつ病患者の数はここ10年間で倍増しています。
1996年の43万人が、2008年には104万人になってる。
受診率の低さを考慮すれば、
実際の患者数はもっと膨大な数になるでしょう。
もともと几帳面で真面目な方が多いこともあって、
日本人はうつ病になりやすい――
そう紹介しているサイトも見かけるのですが、
実際は違います。

心の病の国際比較として、現在、最も信頼性が高いのが、
世界精神保健調査(World Mental Health Survey)というもの。
WHOとハーバード大学が中心になって実施された大規模な国際共同研究で、
その一環として日本でも調査が実施されました。
それが「こころの健康についての疫学調査」(2002年~2003年)です。

調査の対象となったのはうつ病を含む気分障害と、
パニック障害や恐怖症、PTSDなどの不安障害
そして物質関連障害の3つです。
この調査からはじき出されたデータの中から、
気分障害の【予想生涯罹患リスク】を主要先進国の自殺死亡率に重ねてみましょう。
ちなみに【予想生涯罹患リスク】とは、
全人口の内で65歳までに経験すると予想される者の割合を意味します。

図をクリックすると拡大します
suicide-5

一目でわかるように、
アメリカとフランスのリスクが30%を超えて際立っています。
3人に1人は生涯に一度は気分障害を経験する――恐ろしい数字です。
それに比べ、ドイツやイタリアのリスクは半分程度ですが、
日本のリスクはそれよりもさらに低くありませんか?
日本人はうつ病になりにくい――
これが科学的な調査で明らかになった事実です。

日本のうつ病患者は欧米より少ないんです。
こうした違いの鍵を握っているのが、
ALDH2 だと私は推測しています。
新モンゴロイドの系譜を引く日本人はドーパミン濃度が高く、
脳の活動も活発なのではないでしょうか?
パーキンソン病の有病率を人口10万対で比較しても、
日本の100~150人に対して欧米は2倍の200~300人といわれています。
日本人の脳はドーパミンを効率的に利用できる!!!
だからこそ、うつ病にもなりにくいのでしょう。
たとえ人生が苦しくても、
笑顔を絶やさずに前向きに生きていくことができるんです。

それなのに、どうして自殺者が多くなったのか――
そこで私が注目しているのが物質関連障害(substance-related disorder)です。
これは、本来体内に存在しない化学物質の摂取により、
脳に影響が及んで生じる精神障害の総称です。
最も代表的なのが覚醒剤や麻薬などの薬物障害ですが、
お酒、つまりアルコール(エタノール)も原因物質の一つ。
自殺とうつ病の関係は有名ですが、
うつ病以外では物質関連障害との関係もとても強い。
先ほどのWHOの報告でも、
自殺者全体の17.1%がアルコール依存症を患っております。

アルコール依存症とうつ病は高い頻度で合併することも知られています。
アメリカにおける大規模な疫学調査では、
アルコール依存症患者の約30%がうつ病を発症しており、
うつ病になるリスクはそうでない方の4倍ほどになることがわかりました。
自殺の危険性は6倍も高くなり、
自殺者の3人に1人からアルコールが検出されるそうです。
つまり、自殺する前にお酒を飲んでいたってこと。

日本の調査でも同様の事実が確認されており、
自殺例全体のアルコール検出率は32.8%に及ぶといいます。
うつ病、アルコール依存症、自殺は三つ子の関係なんです。
もちろん。
飲酒していないときでも自殺にはしる傾向が高まります。
こうした知識を踏まえた上で、次のグラフを見てみましょう。

図をクリックすると拡大します
suicide-6

高度経済成長とともに日本のアルコール消費量は上昇し、
1990年代にピークを迎えます。
これに平行して、【大量飲酒者】も増えてるでしょ?
【大量飲酒者】とは毎日、150mℓ以上のアルコールを摂取する方です。
日本酒に換算すれば5合半、ビールなら6本程度とお考えください。
こういう方はアルコール依存症と考えてほぼ間違いない。

ライト感覚の様々なアルコール飲料も発売され、
日本では身近な飲み物になっている感があります。
しかし欧米では政策的な酒税の引き上げや健康教育の推進で、
飲酒習慣の抑制に努めてきました。
人口1人あたりのアルコール消費量を比較すると、
フランスでは1977年の16.4ℓを、2003年には9.3ℓまで減少させています。
ほぼ半分に減らしたわけ。
フランス人は健康のためにワインを飲んだりしていません!!!
アメリカでさえ20%近く削減しています(8.3ℓ→6.8ℓ)。

これに反して、唯一、日本では、
約30%もアルコール消費量が増加しているんです。
それでも欧米に比較すれば日本の消費量は少なく、
アルコール依存症の患者も決して多いわけではございません。
ただし。
これはあくまでも欧米基準で考えた場合のお話……
日本人は ALDH2 の活性が低い方が多いことを忘れちゃいけない。
本来なら強みとなるこの遺伝的特徴が、
ことアルコール摂取の場合には弱点になってしまうのです。
より少ない量でアルコール依存症になってしまう――
本来なら、この点がもっと周知徹底されるべきなのに、
このままお酒を野放しにしたらどうなるのか?
最後のグラフを見ながら、じっくりとお考えください。

図をクリックすると拡大します
suicide-7

日本の男性の自殺死亡率に飲酒習慣のある者(男性)の割合を重ねてみました。
統計上で【飲酒習慣のある者】とは、
週に3日以上、かつ1日1合以上飲酒する者を意味しています。
つまり、1週間に3合以上、ビールなら大瓶3本以上ってわけ。
すると40歳代~60歳代の男性のほぼ2人に1人に飲酒習慣があり、
この年齢層、つまり中高年男性ほどお酒を飲んでいることがわかります。
そして自殺死亡率も中高年男性が最も高い!!!
この一致を偶然と思うか必然と考えるか――
あなたはどちらでしょうか?

仕事が上手くいかない。
仕事がきつい。
会社が倒産した。
失業した――
あるいは、歳をとって体力が衰え、
疲れやすく、
身体に激痛が走る。
挙句の果てに病気になった――

どちらも、お辛いことでしょう。
しかしだからといって、
ストレスから逃れるために、酒浸りになるのはお止めになる方が良い。
最悪の結果を招きかねません。
むしろ苦しいときに重要なのは、
家族や仲間、あるいは地域のサポートです。

最後に。
「文化の日」ですから、もう一つグラフを紹介しましょう。
国民生活センターが集約した、
全国のシックハウス(sick house)の危害発生件数の推移です。

図をクリックすると拡大します
suicide-8

日本の住宅は1990年代から高気密・高断熱化を推し進めます。
その結果、室内空気汚染が問題となり、
シックハウスが社会問題化したといわれています。
でも本当の問題は、
計画換気という概念を置き去りにしたことでした。

原因物質としてはホルムアルデヒドが大きく取り上げられ、
それだけが原因と勘違いしている方も多いようです。
しかし、むしろトルエン(toluene)を筆頭とする有機溶剤にこそ注意を払うべき――
私はそう考えています。
というのも……
有機溶剤とは簡単にいえば”シンナー”のこと。
それでおわかりのように、
トルエンも物質関連障害の原因物質の一つだからです。

奇しくも、シックハウスもまた1990年代に急増しています。
その事実と自殺者数増加の因果関係を検証した研究は、
残念ながら見当たりません。
でも、シックハウスは”白”なんだろうか?
もちろん、それだけが原因でないことはいうまでもありませんが、
増悪因子として作用しているのではないか?
限りなく”黒”に近い”灰色”――
私にはそんな気がしてなりません。

仕事で扱っていたトルエンが原因で化学物質過敏症(MCS)になった妻が、
大きく包丁を振り上げて、
「てめぇ、ぶっ殺してやる!」と叫んだ恐ろしい体験は、
私の脳裏から消え去りません。
おとなしく物静かで平凡な女性を、
目に見えないトルエンは鬼のように変えてしまうのです。

国によるシックハウス対策は、
2003年の『改正建築基準法』に至ります。
そのポイントは建材の低ホルム化で、それなりの効果があったのは確かです。
実際、シックハウス危害発生件数の増加も止まっていますが、
それでも高い水準で横ばい状態を続けていませんか?
というのも、
住宅の新築やリフォームをきっかけとするケースばかりでなく、
家具類や害虫駆除をきっかけとするケースが増加しているからです。
2001年を例にとれば、
318件のうち約40%は家具類や害虫駆除関連です。
特に、家具に関する相談件数が増えているといいます。

こうしたシックハウスを防ぐには建材の低ホルム化は無力であり、
24時間、汚染空気を新鮮な空気に入れ替えるのが効果的です。
つまり、計画換気はゼッタイに標準化しなければならない――
もちろん『改正建築基準法』でも換気装置を義務化していますが、
換気装置が付いていれば計画換気というわけではございません。
実際には、計画換気には程遠い代物が多すぎます。

日本の家はもっと真剣に換気を考えなければいけない!!!
もし努力を怠った場合には……
悲しいことですが、
私は日本の未来を懸念せざるを得ません。
シックハウスに生まれた子供は、
赤ん坊のときから”シンナー”を吸い続け、
自殺者はより低年齢層に裾野を広げていく――
そんな事になってからでは、手遅れだとは思いませんか?



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お酒に弱い人は、シックハウスにも弱い

2010 - 10/19 [Tue] - 15:31

残業続きの毎日で、もう身体がボロボロです。 (*_*)
でも、汗を流すのって健康にはいいんでしょうか?
健康診断の結果が返ってきましたが、とても良好な結果に驚いています。

血圧はもともと低い方で、今回も60mmHG-100mmHGでした。
びっくりしたのは、中性脂肪の値が劇的に下がったこと。
これまではちょっと”メタボ気味”だったんですが、
今回の中性脂肪値は128mg/㎗(50~149)、
HDLコレステロール値は45mg/㎗(40~80)と共に”正常”範囲。
総コレステロール値なんか148mg/㎗(150~219)で、
体脂肪率も12%まで下がりました。
むしろ、もう少し高くても良いくらいです。
 ■ ( )内の数字は成人男性の基準値です。以下も同じ。

尿酸値は5.3mg/㎗(3.6~7.0)、痛風の心配はなさそうです。
ついでに、肝機能も very good !!!
皆さんも良くご存知のように、
肝機能を示す指標には【GOT】と【GPT】がよく用いられます。
【GOT】はグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼのことで、
アスパラギン酸アミノ基トランスフェラーゼ(Aspartate Amino Transferase)ともいいます。
むしろ欧米ではこちらの名称が一般的なため、
日本でも【AST】と呼ぶようになってきたようです。
一方、【GPT】はグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼを指します。
こちらも欧米ではアラニントランスアミナーゼ(Alanine transaminase)と呼ばれるので、
最近では【ALT】と表記するようになってきました。

これらの酵素は全身の細胞に分布しますが、
中でも、最大の臓器である肝細胞に多く分布します。
肝細胞が破壊されると酵素が血液中に流出するため、
その血中濃度を測定することで肝障害の程度を知ることができるわけ。
ちなみに、こういう酵素のことを逸脱酵素といいます。

肝心の検査の結果ですが、
【AST】は20U/ℓ(10~40)、【ALT】は22U/ℓ(5~45)でした。
自分で言うのもおかしいですが、とても良い値です。
私の肝機能が良好なのは、
お酒を飲まないおかげかもしれません。

お酒が肝臓に負担をかけるのは周知のことですが、
アルコール性肝障害では特に【AST】の値が大きく跳ね上がります。
ただし、それ以上に顕著なのが【γ-GTP】という指標。
こちらはγ-グルタミルトランスフェラーゼという酵素で、
お酒にとても敏感に反応する酵素です。
アルコール代謝が亢進すると大量に産生されて血中にも流出するため、
この値が高値の場合にはアルコール性肝障害が疑われるというわけ。
今回の私の値はわずか13U/ℓ(79以下)――
お酒を控えると、肝臓に良いのは間違いないみたいです。 (^・^)

さて、本題に入りましょう。
お酒を飲むと、顔が真っ赤になる方はいませんか?
心臓はドキドキし、気持ちも悪くなります。
不思議なことに欧米人にはこうなる方はいないようで、
東洋人に特有の現象らしい……
そこで、これをオリエンタル・フラッシング(oriental flushing)といいます。
実は私もその典型なんですが、
その原因はアルコール代謝酵素の違いにあることがわかっています。

図をクリックすると拡大します
aldehyde dehydrogenase-1
ALDH2 の活性中心はシステインです。
このシステインが脱プロトン(H)によってアニオン化し、
生じたチオラートアニオンがアルデヒドの炭素(C)を求核攻撃します。
こうして水素(H)を脱離させ、空いた空席に水酸化物イオン(OH)を結合させて、
ALDH2 がアルデヒドを離れればカルボン酸のできあがりです。
お酒の代謝に関わる ALDH には ALDH1 という酵素もありますが、
こちらは細胞質基質(サイトゾル)にある酵素で、
大きな個人差が存在しないと同時に、
アセトアルデヒドが高濃度にならないと働きません。
従って、お酒の解毒を行うメイン酵素はミトコンドリアにある ALDH2 となります。

最初に基本事項を確認しておきましょう。
お酒の”アルコール”とはエタノール(ethanol)のことです。
体内に摂取されたエタノールは、
まずアルコール脱水素酵素(ADH)の働きでアセトアルデヒドに酸化される。
これがアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)によって、
さらにカルボン酸である酢酸に酸化されます。
酢酸はアセチルCoAとなってTCA回路に投入されるので、
最終的に、二酸化炭素と水に完全酸化されるというわけでございます。

ただし ADH ALDH2 が扱うのは、
一握りのエタノールとアセトアルデヒドだけではありません。
体内に存在するアルコール類やアルデヒド類の代謝に幅広く関わり、
エタノールとアセトアルデヒドとの反応性が特に高いだけの話です。
もう一つ。
ADH ALDH2 があるのは肝細胞だけではありません。
全身の細胞に含まれていますが、
中でも”体内の化学工場”である肝細胞に多いだけの話。
そこで肝臓がアルコール代謝の中心となり、
とりわけ飲酒によって摂取されたエタノールの多くが肝臓で代謝されるわけですが、
血中に入ったエタノールは身体の隅々に運ばれていきます。
もちろん、脳も例外ではない――

ではオリエンタル・フラッシングの原因ですが、
遺伝子の違いに起因すると考えられています。
1970年代にADH の個人差によるという仮説が発表されましたが、
今日では ALDH2 の遺伝子多型が原因と考えられています。
このことを1979年に明らかにしたのは原田勝二先生(元筑波大)でした。

ALDH2 は517ヶのアミノ酸で構成されますが、
問題となるのは478番目のアミノ酸です。
正常なDNAの塩基配列は「GAA」となっており、
これはグルタミン酸をコードしています。
ところが、東洋人には「AAA」となっている方がいて、
この場合にはリシンが合成されてしまいます。
グアニン(G)がアデニン(A)になっているという塩基1ヶだけの違いなので、
こうした変異を一塩基多型(SNP)と呼んでいます。

ただし、アミノ酸がグルタミン酸かリシンかで天と地の違いが生じてしまう。
グルタミン酸の場合には”normal”という意味でN型(N gene)と呼ばれますが、
こちらはアルデヒド代謝酵素としてきちんと機能する。
ところがリシンの場合には、酵素活性が失われてしまうんです。
そこで、こちらは”deficient”の頭文字をとってD型(D gene)と呼ばれます。

私達は両親のそれぞれから遺伝子を貰うので、
表現型としては NN型、ND型、DD型 の3通りがあることがわかりますね?
両親からN型を受けとったNN型の酵素活性を100%とした場合、
ND型の場合にはその半分だから50%――とはなりません。
酵素活性は10%以下に低下します。
というのも、ALDH2 が四量体だからです。
簡単にいえば、同じパーツが4つ揃って酵素として機能するわけで、
そのそれぞれの活性が50%になるので……
  1/2 × 1/2 ×1/2 × 1/2 = 1/16
理論的には、凡そ6%ほどの酵素活性しかないことになります。
そして両親からD型を受けとったDD型は、酵素活性がゼロの完全欠損型です。

実際、飲酒による血中のアセトアルデヒド濃度は、
ND型ではNN型の4~5倍となり、DD型では20~30倍にもなるそうです。
このアセトアルデヒドがオリエンタル・フラッシングを誘発するわけで、
D型遺伝子を受け継いだ方はお酒に弱い体質なのです。
それどころか、DD型ともなるとお酒を”解毒”できません。
こういう遺伝的に飲めない方にお酒を無理強いするのは、
殺人に等しい行為――
単なる好き嫌いの問題ではないことを、
ぜひ知っておいてください!!!

要するに、ND型やDD型の方はお酒に弱い。
それならアルコール依存症にもなりやすい――
いえいえ。
おもしろいもので、現実はその反対。
むしろお酒に強いNN型の方が、
ND型より6倍もアルコール依存症になりやすいといいます。
そこで、次の図をご覧ください。

図をクリックすると拡大します
aldehyde dehydrogenase-2

左図は原田先生がまとめたN型遺伝子の頻度で、
東北・北海道や南九州で多くなっていることがわかります。
これと右図のアルコール消費量を見比べてください。
赤い色が濃いほどアルコール消費量が多いことを示しますが、
左右の図が見事に一致しませんか?

つまり、こういうことです。
ND型やDD型の方はそもそもお酒が苦手です。
あるいは、飲めません。
だから消費量は少なく、アルコール依存症にもならない。
一方、NN型の人はお酒に強い、そして好きなので、
ついついたくさん飲んでしまう。
その結果、アルコール依存症になりやすいんです。

ここで注目しておいていただきたいのが秋田県です。
両親からN型を受けとったNN型の比率が全国で最も多く(77%)、
それを反映して、お酒の消費量も多い。
とりわけ日本酒がお好きなようで、
日本酒の消費量に限っては新潟県に次いで全国2位です。
恐らく、
潜在的なアルコール依存症の方が相当数にのぼるのではないでしょうか。

ただし、日本におけるNN型の割合は56%で、
ND型は40%、完全欠損型のDD型も4%います。
こういう方は関西を中心とする西日本に多いのですが、
それはどうしてか?
さらに興味深いことに、
欧米やアフリカの人たちはほぼ100%NN型だといわれている。
実はこうした地域差が生じた背景には、
人類の壮大なドラマが隠されております。

図をクリックすると拡大します
aldehyde dehydrogenase-3

現代の私達の直接の祖先、
つまりホモ・サピエンス(Homo sapiens)が誕生したのは、
今から20万~15万年前のことです。
約15万年前にアフリカに暮らしていたことは確実で、
ここから世界に拡散していったという【アフリカ単一起源説】が有力です。
では、どうしてアフリカの大地を離れたのか?
ホモ・サピエンスがアフリカを出る(出アフリカ)のは今から6万年ほど前のこと。
時を同じくして、ヴュルム氷期に突入します。

1998年、イリノイ大のアンブローズ(S.H.Ambrose)がある仮説を発表しました。
約7万年前に発生したスマトラ島のトバ火山の大噴火が、
ヴュルム氷期の引き金を引いたというのです。
噴火といっても、半端なもんじゃございません。
過去数十万年で最大規模の噴火でした。
そのため地球は「火山の冬」に見舞われ、
平均気温は5℃も低下したと考えられています。

そうなれば、当然のことながら環境は激変したでしょう。
多くの生物種が絶滅し、人類も例外ではありませんでした。
ホモ・サピエンスより先に世界に散らばった人類のほとんどが絶滅し、
アフリカに留まっていたホモ・サピエンスも絶滅の危機に瀕します。
これを物語る事実があります。
姿かたちは異なっていても、
現存するホモ・サピエンスの遺伝子は99.9%同じです。
つまり、ほとんど違いがないといっても差し支えない。
ここまで遺伝的に多様性が低いのは、
ある時期に人口が極端に少なくなったから――
それがこの時期であり、
数万人以下、中には数百人程度まで減少したとする研究者すらおります。
まさに、絶滅の崖っぷちに追い込まれていたんです。

恐らく、食糧危機に直面したのではないでしょうか?
私達の祖先は新天地を求めて”故郷”を離れます。
こうして、アラビア~中東に進出したのが6万年前のこと。
ここから東に進む一団と西に進む一団に分かれ、
東に進んだグループは5万年前に東南アジアに達します。
気候の寒冷化によって当時は広大な大陸が広がっており、
これをスンダ大陸といいます。
ここに腰を落ち着けた人々が、
現在のモンゴロイド(Mongoloid)の祖先です。

ところで、【氷河期】というとどのようなイメージをお持ちですか?
気温が下がり地球は寒冷化した――
それで間違いはないのですが、
ずっと一様に寒かったわけじゃ~ないんです。

図をクリックすると拡大します
aldehyde dehydrogenase-4

これはグリーンランドの氷河から復元された気温の変化です。
実際には数百年から数千年続く温暖期(亜間氷期)と寒冷期(亜氷期)が、
20回ほども繰り返されていることが明らかになりました。
これをダンスガード・オシュガー・サイクル(Dansgaard-Oeschger cycle)といいます。
温暖期と寒冷期の温度差は10℃以上に及び、
しかも、わずか数年から数十年で入れ替わってしまう!!!
この猫の目のような激しい気候変動に私達の祖先は翻弄され、
生き残るために必死で闘ったに違いありません。
そのおかげで、私達が生きているんです。

今から3万年ほど前、気候は一時的に温暖化します。
このとき、スンダ大陸から北上した一団がいたようです。
彼らはマンモスハンターで、
北上するマンモスを追ってシベリアに到達します。
マンモスというと寒い場所に棲息していたイメージがありますが、
当時のシベリアは比較的温暖で、
マンモスの主食となるイネ科の植物が生い茂っていました。
そしてこのとき、
大陸と地続きだった日本列島にもモンゴロイドがやってきたと思われます。

ところが、気候が一気に激変する。
約2万年前に地球は再び寒冷期を迎え、
最も大陸氷河が発達した最終氷期最盛期に突入します。
ヨーロッパに進出していたホモ・サピエンスは寒さをを避けて南下し、
あるいは逃げ遅れた者は死に絶えたと考えられています。
ヨーロッパは無人の荒野になりました。
そしてシベリアに進出していたモンゴロイドの中にも、
氷河に退路を断たれてしまった一団がいたようです。

しかし、奇跡がおきます。
寒冷な気候に適応し、彼らは見事に生き延びたんです。
彼らは独自の進化を遂げました。
例えば……
身体の表面積を少なくして、皮膚から失う体熱を最小限に抑えました。
短い手足、凹凸の少ない顔――全て寒冷地適応した結果です。
水分の多い眼球を凍結から防ぐため、一重瞼になりました。
体毛も少なくなり、アポクリン汗腺も退化しました。
こうして独自の進化を遂げたモンゴロイドが新モンゴロイドです。
いってみれば”ニュータイプ”ってわけで、
南方型のモンゴロイドは旧モンゴロイドと呼んで区別されます。

最終氷期最盛期が終わってベーリング/アレレード期という温暖期に入ると、
彼らはシベリアから四方に散らばっていきます。
ある者はベーリング海峡を越えてアメリカ大陸に進出し、
またある者は揚子江流域まで南下します。
その地で稲作技術を生んだのが新モンゴロイドでした。

ただし、日本列島への進出は遅れたようです。
約1万年前のヴュルム氷期の終了とともに大陸から切り離され、
日本は文字通り”列島”になったからです。
ここに新モンゴロイドが上陸するのは3,000~2,000年前のこと。
彼らが稲作技術を持った弥生人に他なりません。
一方、先住民であった旧モンゴロイドは、
新モンゴロイドに楔を打ち込まれたように北と南に追いやられていきます。
それが縄文人というわけ。

ここで最初の話に戻りましょう。
北海道や東北、そして南九州に多いN型遺伝子は、
旧モンゴロイドである縄文人の影響と考えられます。
一方、不活性型のD型遺伝子をもつ方々は、
新モンゴロイドである弥生人の系譜をひいていると考えて良さそうです。
ということは。
D型という突然変異が生じたのは、
新モンゴロイドの祖先がスンダ大陸を離れた後のことになるでしょ?
それは約3万年のできごとであった――と考えられるわけです。
だから純血の旧モンゴロイドはD型遺伝子を持っていない。
まして、はるか昔にモンゴロイドの一団と分かれ、
地理的にも遠く混血も生じなかった白人や黒人には、
D型遺伝子が紛れ込むことがなかったのも当然なんです。

つまり、D型遺伝子は新モンゴロイドの特徴――
ってことは……
D型遺伝子を持つことは寒冷地に適応するには好都合だったのではないでしょうか?
それどころか、 ALDH2 の突然変異こそが、
極寒の中で生き延びられた鍵であったと私は考えています。

ここで、前回の話を思い出してください。
ALDH2 はミトコンドリアに存在するアルデヒド脱水素酵素で、
ドーパミン代謝に関わっているのも ALDH2 に他なりません。
その酵素活性が低いということは、
新モンゴロイドは体内のドーパミン濃度を高く維持できるのではないか?
そのことが、
より多くのエネルギーを生産することにプラスに作用した――
私はそう推測しております。

ただし、注意しなければいけないことがあります。
ALDH2 の活性低下は寒冷地適応には好都合でしたが、
お酒を飲むことは想定しておりません。 当たり前だね (>_<)
そこでND型やDD型の方が好きでもないお酒を無理に飲むと、
かえってNN型の方よりも短期間でアルコール依存症になってしまいます
脳内のドーパミンが過剰になりすぎてしまうからでしょう。
それどころか、急性アルコール中毒で死んでしまう危険も高い。 (T_T)

お酒は百薬の長――
しかし、好きでもない、あるいは飲めないのに、
無理をしてまで飲む必要はなさそうです。
そして、お酒の好きな方、お酒にお強い方も飲みすぎには注意してくださいね。
お酒のことを”きちがい水”とも言うことをお忘れなく!!!

最後に。
日本人と欧米人では ALDH2 の活性が違う。
このことは、
ドーパミンをはじめとする脳内モノアミンの代謝活性も違うことを意味しています。
D型遺伝子を持つ場合はモノアミンの濃度が相対的に高いと思われ、
そういう方が日本人の約半分を占めているんです。
こうした特性が、
シックハウス(sick house)にも影響を与えているのではないでしょうか。

室内空気汚染の原因物質の一つであるトルエン(toluene)は、
モノアミン酸化酵素(MAO)の働きを阻害します。
その結果、脳内のドーパミン濃度が高くなる――
誤解を恐れずに敢えて申し上げますが、
適度にドーパミンの分泌を促すことは意欲や活力を高めますから、
トルエンも場合によっては”活力剤”として作用するのかもしれません。

ただし欧米と違って、日本にはもともとドーパミン濃度の高い方が多い。
こういう方が高濃度のトルエンに曝された場合、
脳内のドーパミン濃度が過剰に高まるのではないか?
そして、かえってドーパミン細胞を障害してしまうのです。

お酒に弱い方が無理やりお酒を飲んだのと同じことですが、
シックハウスの場合はもっと始末が悪い。
お酒なら飲まなければ良いだけの話ですが、
シックハウスの場合にはそういうわけにはいきません。
人間は1分間に16~20回の呼吸をし、
安静時には1回ごとに0.5ℓの換気をします。
空気の重さを1.3g/ℓとすると、
1日に吸う空気の重さは……

  1.3×0.5×20×60×24 = 18720(g)

宜しいですか?
人間は1日に約20kg(15㎥)もの空気を”食べている”のであり、
しかも数分たりとも”絶食”するわけにはいきません。
もしこの中にエタノールやトルエンが紛れ込んでいた場合には、
好むと好まざるに関わらず、
強制的に”食べ”続けなければいけないのです。
その危険性といったら、
自分の意志で摂取を加減できるお酒の比ではございません。 (>_<)

そういえば、こんなことを思い出しました。
スウェーデンハウスのモデルハウスを見学したときのこと、
やたらシンナー臭が鼻につくのが気になりました。
理由を尋ねてみると、1週間前に窓サッシの塗装をし直したとのこと。
木製サッシや木製ドアは輸入住宅のステイタスの感がありますが、
定期的なメンテナンスが欠かせません。
あちらでは日曜大工でペンキを塗ることが当たり前だそうですが、
当然のことながら、トルエンのような有機溶剤を吸うことになります。

欧米人はこの程度のことでビクともしないのかもしれませんが、
それが日本人にも当てはまるなんて考えない方が良いのかもしれない。
ALDH2 の活性が低い方が多いからです。
つまり、日本人は室内空気汚染に脆弱――
極寒のシベリアに閉じ込められた私達の祖先は、
エタノールを大量に飲む時代がやってくることなんか想定していませんでした。
そして……
トルエン濃度の高い家に住むことも夢想だにしていなかったはずです。

寒冷な気候を凌ぐには好都合だった強みは、
シックハウスに関しては弱点として作用している――
そんな風に懸念しております。



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シックハウスは脳の老化を招く

2010 - 09/30 [Thu] - 14:24

つい先日まで猛暑日だったのに、急に寒くなりました。
一昨日は雨天だったせいもあり、外気温はたったの17℃でした。
外気温が一気に20℃近くも下がったことになります。
このような激しい温度差に直面すると、
熱産生をコントロールする甲状腺ホルモン系に混乱を来たします。
ひいては、エネルギーも不足気味になるでしょう。
その結果、体調を壊して何となく気分も落ち込む……

一方、「FPの家」の室温は24℃でした。
外気温より7℃も高いので、
家の中に入ると優しい温もりを感じます。
夏の間の室温は28℃だったわけですから、
温度差もわずか4℃しかありません。
だから、身体に優しい!!!

それに比べて、プレハブの仕事部屋は19℃――
外気温とほとんど変わらず、肌寒さを感じてしまった。 (*_*)
「FPの家」とどうしてこうも違うのか?
その理由は、断熱性能と気密性能に雲泥の差があるからです。
見栄えよりも健康に暮らすことを大切にしたいなら、
家を建てる際には”性能”は疎かにしないでくださいね。

さて。
私が医学や化学に興味を持ったきっかけは、
妻の病気(化学物質過敏症)でした。
しかし、実はそれだけではないんです。
以前紹介した ことがありますが、
義父、つまり妻の父はパーキンソン病(Parkinson's disease)でした。

パーキンソン病とは脳のドーパミン細胞が減少する難病です。
ただし、ドーパミン細胞は加齢でも減少します
ある資料によれば、若年時に比べ80歳では半分以下に減少するらしい。
ところが、同年齢の健常者の約30%にまで減少するのがパーキンソン病です。
そのため脳内のドーパミン(dopamine)が不足し、
様々な障害を生じてしまうのです。

パーキンソン病におけるドーパミン細胞の異常な減少は、
もちろん加齢だけでは説明がつきません。
ウィルス、遺伝、毒物、活性酸素などなど、様々な原因が仮定されていますが、
残念ながらはっきりした発症メカニズムはわかっていない。
だから、病気を根本的に治すこともできません。

現在では薬によって症状の進行を遅らせることしかできませんが、
セレギリン(ディプレニル)はこうしたパーキンソン病治療薬の一つです。
ドーパミンを分解する酵素の働きを阻害する作用があり、
結果として脳内のドーパミン濃度を上げてくれる。
この薬が作用する分解酵素をモノアミン酸化酵素(Monoamine Oxidase)といいます。
頭文字をとって MAO とも呼ばれる。
興味深いことに、MAO の活性は年齢と共に上昇します。
これがあたかも老化を促進しているように見えることから、
MAO を【老化酵素】と考える方もいるらしい……

図をクリックすると拡大します
mitochondria-11

MAO の触媒作用の詳細は明らかにされていません。
しかし、電子(e-)移動に伴うラジカル中間体を経由するという説が有力です。
想定される反応はというと、
R―CH2―NH2 という構造を持つアミン(amine)が、
MAO によって二重結合を有する R―CH=NH というイミン(imine)に変えられます。
さらに、このイミンの加水分解による脱アミノ化の結果アルデヒドを生じる――
monoamineであるドーパミンの場合には、
3,4-ジヒドロキシフェニルアセトアルデヒド(DOPAL)というアルデヒドになります。

では、ドーパミンから引き抜かれた電子(e-)がどこに行くのか?
ここで活躍するのがリボフラビン(ビタミンB2)です。
MAOFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)を補酵素とするフラボ酵素の一つで、
酸化型の FAD が電子(e-)を受けとって FADH2 に還元されます。
ただし、還元型となった FADH2 を再生する必要があるでしょ?
その際に最終電子受容体として利用しているのが、
ミトコンドリアの電子伝達系と同じ分子状酸素(O2)なんです。
こうしてスーパーオキシドアニオン(O2-)が生成し、
さらにこれが1e-還元されて過酸化水素(H2O2)を生じます。
つまり、MAO は活性酸素(ROS)を発生させる――というわけ。

こうして発生する ROS が老化を促すというのが、
MAO=老化酵素説の根拠です。
でも、果たしてそうなんでしょうか?
セレギリンを投与したマウスでは MAO 活性が20%に低下し、
寿命延長効果が見られたという報告は確かにあります。
しかし、人間でも同じ効果があるのかどうか……?
この点に関しては、確かな学術論文は見当たりません。
人間とマウスでは脳のドーパミン利用に雲泥の差がありますから、
実験動物の結果がそのまま人間にも当てはまるということではないのでしょう。
つまり、MAO が老化を促進しているとは断定できない!!!

あくまでも個人的な”直感”ですが、
MAO 活性を抑制する方が長生きするという話には違和感を感じます。
というのも、一度お話ししたことがあるんですが、
トルエン(toluene) MAO を阻害します。
トルエンはホルムアルデヒドと並ぶ室内空気汚染の原因物質であり、
ってことは、シックハウスに住んでいると長生きする――!?
そんなことは、常識的に考えておかしいと感じませんか?

そこで、MAO の活性が年齢と共に上昇することの”意味”を考えてみましょう。
重要なのは MAO の配置場所です。
というのも、MAO はミトコンドリア外膜に埋め込まれており、
ミトコンドリアの機能調節に深く関与していると思われるからです。

ミトコンドリアは細胞内呼吸によってエネルギー生産を行う細胞です。
そのためには栄養、そして酸素が欠かせません。
もし体内の酸素分圧(PaO2)が下がってしまうと、
酸素不足から電子伝達系による ATP 合成が低下します。
中でも複合体Ⅳの効率が低下し、
複合体Ⅳに到達する前に電子(e-)が酸素と結合してしまいます。
すると大量の ROS が発生し、
ミトコンドリアそのものにダメージを与えてしまうことになる。

それってとってもマズイでしょ?
そこで、ミトコンドリアを防御するシステムにスイッチが入ります。
いってみれば、”ギアチェンジ”するようなものとお考えください。
このとき、中心的役割を演じるのが低酸素誘導因子(HIF)というものでした。

図をクリックすると拡大します
mitochondria-12
癌細胞もHIFを強発現していることが知られており、
十分な酸素存在下でも嫌気的解糖が亢進してグルコースを大量消費します。
この現象は今から80年も前にワールブルグによって発見されたことから、
【ワールブルグ効果】と呼ばれています。
その目的はよくわかっていませんが、
ROSの発生を抑えているのではないかという説が有力です。
その結果、癌細胞は不死化します。
ただし、本来HIFには細胞増殖にブレーキをかける作用があるのに、
癌細胞は生体が死を迎えるまで無秩序に増殖を続けます。
そこで注目されているのが、MYCという細胞増殖因子です。
通常、MYCの発現と活性はHIFによって抑制されています。
ところが癌細胞ではHIFがMYCを制御することができず、
むしろ協調して嫌気的解糖の異常な亢進を招くことがわかってきました。
つまり、アクセルが戻らずブレーキも効かない――
喩えるならば、癌細胞とは暴走車のようなものなのでしょう。

低酸素環境下で活性化した HIF はPDHリン酸化酵素1(PDK1)の発現を誘導し、
ピルビン酸脱水素酵素(PDH)を不活性化します。
同時に乳酸脱水素酵素A(LDHA)を活性化してピルビン酸を乳酸に還元する。
その結果、TCA回路に供給されるアセチルCoAは大幅に減少します。

激しい運動をした際にも、
体内の乳酸値が上がることはどなたもご存知でしょう。
これは解糖系をメインとするエネルギー代謝に切り替えることで、
必要最小限のエネルギーを確保する生体防御反応の一つです。
乳酸は疲労物質である――
かつてはそう考えられていましたが、これは誤解でした。
まだまだ疲労物質と信じている方が多いのですが、
最近になって、正反対の働きをしていることがわかってきました。
つまり、乳酸は疲労を回復させる――
これが最新の研究成果から導かれた答えです。

ただし、解糖系に切り替えるといっても、
電子伝達系によるエネルギー生産が完全に停止するわけではないようです。
低酸素環境に対応するよう、電子伝達系も組み換えられます。
例えば、複合体Ⅳの場合はこうなる。
シトクロムc酸化酵素(COX)のパーツを交換(swapping)し、
低酸素型酵素に”改造”します。
それによってエネルギー生産量は減少しますが、
やっかいな ROS の発生を防ぐことができる――
ATP の生産量と ROS の発生量を調整し、
呼吸効率の最適化を図るのが HIF の働きなんです。

こうした事実を踏まえると、MAO の機能も見えてきませんか?
ミトコンドリアで H2O2 を発生させるわけですから、
MAO はエネルギー生産を調節している――
MAO 活性が上がるのはミトコンドリアの損傷を防ぐためであり、
むしろ老化の進行を防御していると思うのです。
興味深いことに、
甲状腺ホルモン(thyroid hormone) MAO 活性を抑制する。
こうした点からも、MAO がエネルギー生産に関与することが窺えます。

ところで。
3,4-ジヒドロキシフェニルアセトアルデヒド(DOPAL)となったドーパミンは、
ALDH という酵素の働きによって、
さらに3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)に酸化されます。
ちなみに、ドーパミン代謝の詳細はこちらもご参照ください。
この ALDH の働きを阻害すると考えられる化学物質に、
1,1´-ジメチル-4,4´-ビピリジニウム=ジクロリドというものがございます。
一般にはパラコート(paraquat)の名で呼ばれており、
かつては広く使用された除草剤です。

図をクリックすると拡大します
paraquat

体内に吸収されたパラコートはカチオン体となり、
さらに電子(e-)を奪ってパラコートラジカルになります。
これが元のカチオン体に戻る際には電子(e-)を放出するでしょ?
その結果、ROS が生成されます。
パラコートの活性酸素生成力はとても強く、
その分、毒性も強い。 (>_<)
特に酸素濃度の高い肺や脳に致命的なダメージを与え、
肺機能が侵されると呼吸困難から死に至ります。 とっても苦しいそうですよ(T_T)
1965年に農薬登録されると、
70~80年代には自殺や犯罪に用いられて多くの方の命を奪いました。
【農薬=危険】というイメージ形成に”貢献”した化学物質のひとつです。

このパラコートがドーパミン細胞を特異的に脱落させることから、
パーキンソン病の原因物質とする説もあります。
ただこうした現象は、ROS だけでは説明がつかない。
もし ROS が原因なら、
ドーパミン細胞だけが障害されるはずはないんです。

むしろ、ドーパミンが毒性の発現に関与しているのかもしれません。
というのも、ドーパミンを枯渇させると、
ドーパミン細胞の細胞死が抑制されるからです。
パラコートはドーパミン代謝系を阻害し、
増加したドーパミンがパラコートに電子(e-)を供与するのではないか?
ドーパミン自身は酸化されてキノン体(dopaminequinone )になります。
ただし、パラコートが阻害するのは MAO ではなく、
ALDH を阻害することでドーパミン濃度を上昇させると考えられています。

ALDH はご存知でしょうか?
アルデヒド脱水素酵素といい、お酒の代謝に関わる酵素として有名です。
お酒とはエタノールのこと。
エタノールはアセトアルデヒドに酸化され、
ALDH によってさらに酢酸に酸化されます。
ただし、飲酒に備えて体内に酵素を用意しておいたわけがない!!!
本来の仕事は、monoamineの代謝なんです。

ところが、想定されていなかった大量のエタノール摂取(飲酒)により、
ALDH はエタノール代謝を優先します。
モノアミンから生じるアルデヒドの代謝は後回しにされてしまうので、
ドーパミンの分解も滞ることになる。
結果として、
MAO を阻害した場合と同じようにドーパミン濃度を上げることとなります。
もちろん、エタノールがドーパミン代謝に影響するメカニズムは複雑ですが、
意外に、ALDH の”横取り”という単純な理由がメインなのかもしれません。

いずれにせよ。
エタノールは脳内のドーパミン濃度を上昇させます。
するとミトコンドリアではエネルギーを増産する”スイッチ”が入るわけですが、
運動のようにエネルギーの消費を伴うわけではありません。
そこで過剰となった ATP がプリン体の蓄積を招くのでしょう。
ビールに限らず、お酒全般が痛風を誘発する理由はこのように説明できます。

そればかりではございません。
過剰なドーパミンはドーパミン細胞自身に障害性を発揮するのではないか?
パラコートの作用メカニズムと同じように、
大量のエタノール摂取は肝臓ばかりか脳にもダメージを与えるのです。
そして MAO を阻害するトルエンでも、
やっぱり同様の事態が発生する……

ドーパミン細胞の脱落があまりにも甚大な場合にはパーキンソン病を発症し、
そこまで至らない場合でも、何らかの障害が発生するのでしょう。
これが化学物質過敏症(MCS)という病の正体――ではないでしょうか?
しかも、ダブルパンチとなるとさらに深刻。
エタノールによってトルエンの毒性は増強されます。
MAO ALDH の双方が阻害されるのだから当然です。
一方で、化学物質過敏症(MCS)ではエタノールに過敏になると指摘されていますが、
これもエタノールによるドーパミン代謝の阻害作用によって説明できる。

しかし、ドーパミン細胞は加齢によっても減少します。
エネルギー生産が活発であればあるほど、
ROS によるダメージも大きくなります。
ダメージを修復できなくなった場合には、もはやエネルギー生産を抑えるしかない……
その結果、加齢と共に MAO 活性が上昇するのではないでしょうか?
ただし前回の話を思い出していただきたいのですが、
エネルギー生産を飛躍的に高めることでヒトの脳は巨大化しました。
この潤沢なエネルギーが確保できなくなった場合、
真っ先にその影響を蒙るのは脳に他なりません。
そこで加齢と共に、
アルツハイマー病(Alzheimer's disease)などの認知症のリスクが高まるわけです。
そして化学物質過敏症(MCS)のメカニズムも老化に準じるのではないか――?
私はそう考えております。

1987年、カレン(Cullen)の発表した化学物質過敏症(MCS)の定義の中には、
次のような項目が挙げられています。
  既存の身体検査では症状を説明できない
つまり、一般的な検査をしても【異常なし】ということです。
「それなら病気じゃないじゃん (?_?)」と思うかもしれませんが、
お年を召したからといって病院に行っても【異常なし】と診断されるはずです。
化学物質過敏症(MCS)も加齢と同じようなものだとすれば、
いくら検査したところでどこにも異常がないのは当然でしょう。

唯一の問題となるのは、
実際の年齢に比して”老化”の進行度が早すぎる――
この影響を最も強く受けるのは、やっぱり脳!!!
もし functionalMRIPET といった最新の脳機能検査を行えば、
化学物質過敏症(MCS)の患者さんは健常者とは違う【異常】を見せるに違いない。
もちろん、根拠のない憶測ではなく、
実際にそのような研究成果が報告され始めていることを付け加えておきます。

最後に。
妻と義父の話をもう少し補足しておきましょう。
二人は同じ会社で働いていました。
その会社では有機溶剤を使用する仕事をしており、
妻も義父も、毎日、高濃度のトルエンを吸っていたことになります。

妻が化学物質過敏症となり義父がパーキンソン病に苦しんだという出来事には、
きっと何らかの繋がりがあるに違いない――
その謎を解く”鍵”となるのがトルエンであり、
トルエンによってドーパミン細胞が死滅してしまうのではないか――
そう推測してコツコツ資料を読み漁ってきましたが、
知れば知るほど確信に変わりつつあります。

妻の場合は職場が原因でしたが、
トルエンに汚染されたシックハウスでも同じ事が起こる可能性があります。
私がシックハウス問題にこだわるのは、
妻の苦しみを他の方には味わっていただきたくないからです。
病気は本人を苦しめるだけでなく、ときには家族の崩壊を招きます。
明るい未来を思い描いて建てたマイホームが、
そんな不幸の引き金になるのを黙過することはできません。

そしてくれぐれも注意していただきたいのは、
自然素材で建てた家なら大丈夫――という非科学的で子供だましのような解決方法。
そう信じ込んでしまっている方は、
こちらの記事もあわせてご一読ください。 m(__)m



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エネルギー不足は脳の機能低下を招く

2010 - 09/21 [Tue] - 13:52

ホンと、申し訳ございません。 m(__)m
随分と更新をサボってしまいました。
実は先週の土曜日、さる筋(具体名はヒミツ)の取材を受けました。
これが結構本格的な取材で、大幅に時間を食ってしまった。 (*_*)
そのとき訊かれたのが……

あなたは理系の出身ですよね?

よく勘違いされるんですが、私は文学部を卒業しております。
お恥ずかしい話、医学とか化学は専門外なんです。
しかし、妻が化学物質過敏症(MCS)と診断されたのが10年ほど前のこと。
病気の辛さや苦しさが「わかる」なんて口が裂けてもいえませんが、
そういう病態が存在することくらいは理解してやりたい――
そういう思いで必死に勉強して今日に至った次第でございます。

最初は右も左もわからないことだらけでしたが、
理系にしろ文系にしろ、基本は同じだと感じています。
どちらも【科学】という点では共通なんです。
私が大学で徹底的に叩き込まれたのは、
根拠のない主張は科学に非ず――ということでした。
独学で医学や化学を勉強する際にも、
この”教え”を常に肝に銘じてきたつもりです。

さて、昨今は健康ブームです。
巷には様々な情報が飛び交っておりますが、
全ての情報が”科学的”に信頼にたるとは思えません。
胡散臭いお話も結構多い。 (>_<)
”非科学的”なのは、ホメオパシーばかりではございません。

ということで、本題に入りましょう。
世の中には、酵素栄養学(enzyme nutrition)というものがあるそうです。
1946年、エドワード ハウエル(E.Howell)が主張したのが始まりで、
生物が一生に使用できる体内酵素には限りがあるという考えです。
体内酵素が消耗されれば病気となり加齢が促される――
そこでこれを補うのが、食品から摂取される【食物酵素】です。

ただし、酵素はタンパク質。
加熱すると変性し、酵素活性を失います。
そこで推奨されるのがローフード(raw food )というわけ。
つまり、生食です。
中には肉を生で食すケースもあるようですが、
多くは植物性食品が中心となるらしい。 そりゃそうでしょ。生肉は怖いもの (+_+)
とりわけ有機野菜や自然食品を尊重し、
食品添加物の含まれた食品は避けられます。
要は、”オーガニック信奉”の一形態のように思えます。

しかし【食物酵素】なるものが、
ヒトの消化吸収を助けているという具体的なデータは存在しません。
そういう考えも一般の研究者の支持を得ておりません。
そもそも”酵素栄養学”なんて申しておりますが、
大学の栄養学の講義で扱われることはない。
ということで、
ローフードが健康に良いという話には根拠がない――のです。

むしろ、実際は逆なのではないか?
加熱して調理する方が健康に良い――私はそう感じております。
その方が消化に要する”エネルギー”を節約できるからです。
そこで、まずは次の図をご覧ください。
ヒトの脳容量が増大する経過を示したものです。

図をクリックすると拡大します
mitochondria-9

2004年に発表された論文がございます。
タイトルは Energetic cells may have boosted the brain ――
日本語に訳せば「エネルギッシュな細胞が脳を進化させた」となりますが、
残念ながら、論文自体は日本語に訳されておりません。
そこで、簡単に内容をご紹介いたしましょう。

他の哺乳類に比べてヒトに近い哺乳類では、
ミトコンドリアの複合体Ⅳの遺伝子変異が顕著だというのです。
そのことがエネルギー供給を増大させ、
脳の巨大化を可能にした――と推論しています。

ミトコンドリアのエネルギー生産と遺伝子変異の関係は、
複合体Ⅳの研究が最も進んでいます。
霊長類のシトクロムcオキシダーゼ(COX)の進化速度が増加しているのは確かで、
複合体Ⅲのシトクロムbにも同様のことが言えるらしい。
それに比べて複合体Ⅰや複合体Ⅴの研究は遅れていますが、
複合体Ⅰの変異が様々な病気に関与しているとの指摘もあります。
例えばパーキンソン病、
あるいは先日紹介したミトコンドリア病などなど

もっとも。
こうした遺伝子変異が脳の巨大化に結びついたと結論するのは、
現段階では時期尚早のようです。
あくまでもまだ”仮説”の段階ですが非常に興味深く、
今後の研究の進展が期待されます。

ここで図に注目していただきたい!!!
チンパンジーやアウストラロピテクスの脳容量は凡そ500c㎥でしょ?
脳のエネルギー使用量は身体全体の約5%でした。
ところが、ホモ・ハビリスから脳容量はグングン増加し、
ホモ・サピエンスでは1500c㎥に達します。
体重の2%しかない脳が、全体の20%のエネルギーを消費するんです。

こうした脳の巨大化を支えたのは、
遺伝子変異だけでは説明がつきません。
そこで、次に紹介する論文。
タイトルは、
Metabolic changes in schizophrenia and human brain evolution ――
訳せば「統合失調症における代謝の変化と脳の進化」ってな感じでしょうか?
2008年に発表された論文ですが、こちらも邦訳はございません。

簡単に紹介しましょう。
著者(P.Khaitovich)は、
ヒトの脳の進化には2つのステップがあると考えております。
まず最初の飛躍のきっかけは、約200万年前のホモ・ハビリスの段階です。
ここで、私達の祖先は高カロリー食を手に入れました。
ミトコンドリアの電子伝達系が進化したということは、
いってみれば”エンジン”が高性能化したようなもの。
しかし”燃料”がなければエンジンは動かないでしょ?
そこで。
高カロリー食が大量のエネルギー生産を可能にしたというわけでございます。
その恩恵を独占したのが脳であり、
こうしてヒトへの進化が加速されることになった――

では、高カロリー食とは具体的に何なのでしょう。
それは肉食――そういう説が有力になってきました。
ただし死肉漁り(スカベンジャー)で、
肉食動物のおこぼれを頂戴していたと考えられています。
そこで”肉食”といっても、主に骨髄(ガラ)を栄養源にしたようです。
だからこそ、固い骨を叩き割るために”道具”が必要になったのかもしれません。

良いですか。
ヒトは肉食を始めたがゆえにヒトになれたんですよ!!!
植物性の食糧だけに頼っていたら、
まだ”サル”のままでいたかもしれないのです。
そのことをお忘れなく――

しかも、そればかりではございません。
私はもっともっと想像力をかきたてられます。
実は、1年ほど前の記事で私はこんな風に書いております。
”肉食”に関しても面白い話題があるが、それは後ほど――
そのお約束をようやく果たせます。

骨髄を食したということですが、
それなら脳みそも食ったんじゃないか――
そんな単純な疑問が沸かないでしょうか?
「エッー!」と嫌悪感を催すかもしれませんが、
食脳の習慣は現在でも世界各地に残っているそうです。
中華料理でも、【猿脳】は高級珍味の一つらしい。
脳は脂肪の塊ですから高カロリー。
しかもビタミンやミネラルだって豊富で、
抗酸化物質のビタミンCは他のどの部位よりも高濃度に含んでいます。
まさに、最高の”食材”なのでございます。

ただし、現実はもっと凄まじかったのかもしれない。
北京原人は絶滅した人類の一つですが、
発見された頭蓋骨に穴の開いているものがあるそうです。
中には、頭蓋骨が粉々に砕かれたものもあるらしい。
そこで導き出された仮説が、
北京原人は同族食いをしていた――
”人肉”を食っていたということですね。
躯体の肉に関しては不明ですが、
脳みそを取り出していたのはほぼ間違いないとされています。

そうはいっても、この説には人間として抵抗を感じる。
でも、人類のカニバリズム(Cannibalism)の証拠は他にも出てきました。
スペインの遺跡から発掘されたホモ・アンテセソール(Homo antecessor)は、
北京原人のようにホモ・エレクトスの地域変種の一つで、
最初にヨーロッパ大陸に進出した人類と考えられています。
その遺骨を丹念に調査した結果、昨年になって衝撃的な事実が発表された。
習慣的に食人を行っていたのは明らか――なんだそうです。
それも”食べられた”と思しき11体の内、
大半が子供や若者だったそうです。
弱肉強食――弱い者を狙うのは、自然界の冷酷な鉄則ということなんでしょう。 (T_T)

話を元に戻しましょう。
ヒトの脳はホモ・サピエンスにいたってさらに巨大化します。
その第2のステップを可能にする事件が約15万年前に起こった。
それが、火を用いた調理行為の開始――だというのです。
宜しいですか。
ローフードへの依存を減らせたからヒトになれたんですよ!!!
消化に要するエネルギーを節約し、
その分を脳の更なる巨大化に回すことが可能になったんです。

しかし、余りにも進化のスピードが速かった。
ヒトの脳はエネルギー生産=代謝能力の限界ギリギリに進化し続けたため、
代謝レベルの異常や混乱によるエネルギー生産の低下が、
最も早く脳の機能低下となって現れるのではないか――
論文はそう締めくくっております。
その具体例が、
統合失調症(schizophrenia)や躁鬱病(bipolar disorder)などの精神疾患というわけ。

schizophrenia is a costly by-product of human brain evolution

直訳すれば「統合失調症は脳の進化に伴うコストの高い副産物」、
つまり、【大きな代償】というわけです。
統合失調症のミトコンドリア仮説はまだまだ”仮説”の域を出ませんが、
アルツハイマー病(AD)やパーキンソン病(PD)においても、
ミトコンドリアの活性低下が報告され始めています。

そして、化学物質過敏症(MCS)の病態も上手く説明できるかも……
というのも、妻は常々こう言っております。
食事をするととっても疲れる――
食事をすれば消化吸収のためにエネルギーが消耗され、
血流も消化器官に集中することになるでしょう。
その結果、脳がエネルギー不足に陥ってしまうのかもしれません。
こんな状態でローフードなんかに偏ったら、
脳のエネルギー不足に拍車がかかることになるのは明らか。
それでも……、ローフードが健康に良いっていえるのでしょうか?

ちなみに。
肉食のメリットは他にもあったと私は考えています。
それはプリン体の摂取です。
”プリン”といっても”プディング”とはいっさい関係がなく、
プリン骨格を持つ化学種の総称です。
生体内ではアデニンやグアニンが代表的なプリン体ですが、
プリン(purine)の名が【pure uric acid】に由来するように、
尿酸(uric acid)もまたプリン体の一つです。
ここで、博識の方はピンときたはず。
プリン体と尿酸とくれば、痛風(gout)の話を避けて通れません。

血中の尿酸濃度が高くなると、尿酸は針状の結晶となります。
これが関節や腎臓などに沈着することとなり、
免疫システムによって”異物”とみなされてしまう。
その結果、白血球の攻撃を受け、
耐え難い猛烈な傷みを感じることとなります。
特に足の親指の関節が痛むことが多いらしい……

ところで、痛風の原因は何なのか?
よく言われるのは食事によるプリン体の過剰摂取で、
しばしば槍玉に挙げられるのがビールです。
ビール100g当りに含まれるプリン体は6mg、
ちなみに焼酎にはほとんど含まれません。
そこでこういわれております。
ビールよりも焼酎の方が身体に良い――
でも、ホンとにそうなんでしょうか?
私は焼酎業界の策略じゃないかと勘ぐりたくなります。

実はビールに含まれるプリン体なんて可愛いもので、
肉や魚には100g当り100mgものプリン体が含まれています。
意外なところでは、納豆にも肉や魚に劣らない量のプリン体が含まれ、
エビやレバーにいたってはさらに大量のプリン体を含んでいる。
痛風の原因は単純な過剰摂取ではなく、
食事制限はほとんど効果がないという方もいらっしゃいます。
むしろ問題は、体内におけるプリン代謝にあるらしい。
そこで、図で確認しておきましょう。
ここに紹介したのはアデニンの代謝です。

図をクリックすると拡大します
mitochondria-10

プリン体の生合成はとても複雑です。
グルコースから誘導される5-ホスホリボシル-1-ピロリン酸(PRPP)が”台車”となり、
ここにグルタミン・グリシン・アスパラギン酸が次々と結合していきます。
二酸化炭素やギ酸も利用され、
ギ酸を運搬するのが10-ホルミルTHF、つまり葉酸です。
このようにゼロからプリン体を合成することを de novo合成 といいますが、
生産されたプリン体はDNAやRNAに利用されます。
DNAやRNAは細胞には必ず含まれているものですから、
ほとんどの食品に多かれ少なかれプリン体が含まれるのです。

しかし、プリン体の利用はそれだけではございません。
アデノシン三リン酸(ATP)は”エネルギー通貨”として活躍します。
むしろ私は、核酸よりも ATP が主要な”プリン体プール”だと考えています。
そして、肉には大量のプリン体が含まれる――
筋肉は大量の ATP を消費するんだから当たり前です。

そこで。
育ち盛りの子供には肉を食わせた方が良い――
これが私の考え。
もちろん納豆でも良いのですが、
野菜類のプリン体含有量はそれほど多くありません。
子供を菜食主義で育てるのは、ちょっと……
何でもお野菜がgood――というのは間違い。
大切なのは、バランスのとれた食事ということです。

さて。
使用済みとなったプリン体はキサンチンとなり、
これがキサンチン酸化酵素(XO)の働きで尿酸となり、
さらに尿酸酸化酵素(UO)によってアラントインに変えられ、
最終的には尿素まで分解されます。
ところが、ヒトは尿酸酸化酵素を欠損している!!!
つまり尿酸が最終代謝産物というわけで、
このことがヒトが痛風に苦しめられる根本原因といわれています。

ただし、ここではその”意味”を考えてみましょう。
どうして尿酸酸化酵素を失ったヒトが困らないのか?
プリン体合成はエネルギー生産を担います。
ところが、プリン体合成は莫大なエネルギーを消費する。
しかも、手間隙がかかるのです。
そこで生物は”廃品利用”を行い、
不要となったアデニンやヒポキサンチンを再利用します。

まずアデニンの場合。
アデニンホスホリボシル転移酵素(APRT)の働きにより、
5-ホスホリボシル-1-ピロリン酸(PRPP)とドッキングさせられます。
こうしてあっという間に、
アデノシン一リン酸(AMP)の出来上がりです。
ヒポキサンチンの場合も同じようなもの。
ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシル転移酵素(HGPRT)に触媒されて、
5-ホスホリボシル-1-ピロリン酸(PRPP)と結合する。
これでイノシン一リン酸(IMP)の完成。
煩雑な de novo合成 に比べ、とっても簡単でしょ?
その分、エネルギーの節約になるのです。
こうした合成ルートを salvage合成 といい、
食事から摂取したプリン体もここに利用されます。

de novo合成salvage合成 の比は3:1といわれていますが、
エネルギー消費の激しい部位では salvage合成 への依存度が大きくなります。
その代表が脳に他なりません。
脳を巨大化させ大量のプリン体を必要とするようになった人類は、
salvage合成 を極限まで徹底させたのではないでしょうか?
だから、尿酸酸化酵素(UO)は不要になった……
体内の尿酸蓄積量はほぼ一定量に維持されているそうで、
食事制限を行った程度では微動だにしないのです。

しかし、プリン体の需要は年齢と共に低下します。
成長が止まるのだから当然でしょ?
そこで供給量も体内で自動調節されるわけですが、
ビールはこうしたプリン代謝を乱してしまう。
ビールだけじゃございません。
焼酎だって同類。
プリン体を含有するしないが問題なのではなく、
お酒が体内におけるプリン代謝を活性化する――からです。

でも、本来必要のないプリン体を合成してもただ持て余すだけ。
その結果、尿酸が過剰となってしまうのでしょう。
痛風を発症する方は、恐らく身体のエネルギー利用が低下し始めているはず――
ある程度のご年配の方で運動不足の方が危ない。
メタボだったらさらに要注意です。
こういう方が相当量のお酒を嗜んでしまうと、
過剰なプリン体が体内に溢れることになるのです。
痛風になるのは男性が圧倒的に多い――
こうした事実も、飲酒習慣と関連付けて考えれば納得できます。

痛風でお悩みの○○様。
お辛いことと思いますが、今回の記事がお役にたてば幸いです。
他にも、喫煙やストレスが増悪因子となるでしょう。
身体を冷やさないことも重要で、
できれば「FPの家」なら良かったのに…… (T_T) 
痛みはご本人にしかわからないもの。
どうぞ、くれぐれもご自愛下さい。

最後に、もう一つ追加。
お酒、いや、ここではもっと正確に言いましょう。
エタノール(ethanol)がどうしてプリン代謝を刺激するのか?
私はドーパミン(dopamine)の関与を疑っています。
ドーパミンはエネルギー生産を調節する――
これが、現在、私が検証を進めている”仮説”です。
そこから思い巡らしている先の話はというと、

  ある種の化学物質、たとえばトルエンのような有機溶剤は、
  脳内のドーパミン代謝をかく乱する。
  そのことが脳のエネルギー生産を低下させ、
  脳は機能低下を来たすこととなる。
  これは老化にも相通じる現象であり、
  脳の機能低下は全身の生命活動の不活性化、
  例えば筋力の低下、
  例えば体温調節の不具合、
  例えば免疫力の低下などを誘発するだろう。
  加えて嗅覚機能も低下して匂いに過敏になる……


このような病態が化学物質過敏症(Multiple Chemical Sensitivity)ではないか――?
そう推測しております。

ところが、世の中にはもっと”お手軽”に考えてる方も多い。
シックハウス症候群や化学物質過敏症が注目され始めた頃、
厚生労働省は専門家を集めて【室内空気質健康影響研究会】を組織し、
問題点の整理を行っております。
その報告書が2006年に発表されていますが、
そこでは MCS という未知の病態が存在する可能性は否定せず、
さらなる調査・研究の推進を奨励しております。
その一方で、こういう文言もある。

「化学物質過敏症」は医学的コンテキストからは逸脱した
社会的俗称としての側面を帯びた用語として
しばしば使用されている状況にある。


患者の方は、傷ついた心を逆撫でされる思いがするかもしれません。
しかし、私は的を得た指摘だと思います。

等しく”化学物質過敏症”という言葉を用いていても、
そこに込められる意味はまだまだ統一されていないのが実情です。
中には、社会に氾濫する合成化学物質が人の健康を害する――
その結果発症するのが”化学物質過敏症”と安直に考える方もいらっしゃる。
こういう方は合成洗剤ではなく石けんの使用を推奨し、
食品添加物の入った食品ではなく、有機農作物を食すのが良いと主張する。
身にまとうのはオーガニックコットン。
住む家は自然素材をふんだんに使用した風通しの良い低気密住宅――

申し訳ないのですが、敢えて申し上げます。
この類のお話は、
私にはローフードやホメオパシーと同列にしか思えません。
ここで持ち出される”化学物質過敏症”は非科学的です。
それとは違う”化学物質過敏症”の扉をこじ開けたいので、
私は一人こつこつと資料を読み漁ってきました。
そういう生活が、早いもので10年になります。

この10年間が有意義なものだったのか、
あるいは不毛な10年間だったのか……?
私には確たる自信がございません。
しかし少なくとも、健康や病気に関して、
胡散臭い話とそうでない真面目な話を、
冷静に嗅ぎ分ける程度の知恵はついたように思うのです。

【補足】
室内空気質健康影響研究会の報告書の概要版はこちらです。




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自然治癒力の源-ミトコンドリアの起源-

2010 - 08/31 [Tue] - 15:47

気づいたら、8月ももう終わりです。
暑い日が続いておりますが、みなさま恙なくお過ごしでしょうか?
ブログの更新がなかなかはかどりません。 (=_=)
ハードな仕事に身体が悲鳴をあげ、
おまけに先週と今週は土曜日が出勤でした。
この猛暑の中、中年にはこたえます。

ところで、先日、興味深い記事を目にしました。
日本学術会議がホメオパシーに関する会長談話を発表したというのです。
このブログでも一言触れたばかりですが、
遠慮して、私は”穏便な批判”に留めておきました。
ところがこの会長談話では、
ホメオパシーを荒唐無稽なニセ科学と断じて一刀両断に切り捨てています。

  ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。
  それを「効果がある」と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です。


日本学術会議とは内閣府の特別機関の一つで、
全国の科学者の代表によって構成され、
科学に関する重要事項を審議して政策提言などを行っています。
いわば科学者の代表機関といっても良いわけで、
こういう組織がホメオパシーを批判するのはとても良いことです。

日本学術会議の会長談話を受け、
厚生労働省はホメオパシーや統合医療の研究に乗り出すと発表しました。
日本医師会も賛同のコメントを発表し、
医療現場から排除するよう周知徹底する方針を示しました。

最新科学は、庶民にとっては難解です。
高度に専門化し、一般人には近寄りがたいものになってしまいました。
それに比べてニセ科学は平易で、
庶民にも受け入れやすいという特徴を持っています。
折りしも現代文明への批判から、自然回帰志向の強い方が増えている。
家を建てるときにも自然素材を重視するような、
”ちょっと知的な方々”がニセ科学にはまりやすいようです。

ちなみに。
ホメオパシーをはじめとする代替医療では、
自然治癒力(spontaneous cure)を高めることで病気が癒ると主張します。
確かに、私も自然治癒力のようなものが存在するとは思いますが、
問題はその方法論でしょう。
理に叶った科学的な方法でなければ、
高めるどころか自然治癒力を削ぐことになりかねません。

加えて、その限界もわきまえるべきです。
もし自然治癒力が万能なら、
昔の人ほど健康で死亡率も低かったはず……
しかし、そんなことはどう考えてもあり得ない!!!
身体の調子がおかしいときには、
病院できちんと診察していただく方が賢明です。

自然治癒力を高めるということは、
治療よりも予防と結び付けて考えるべきでしょう。
では、これを高めるにはどうしたら良いのか?
それこそが生体エネルギーの問題であり、
これを生み出す”場”がミトコンドリアに他なりません。

というわけで。
今日はミトコンドリア(mitochondria)のお話しです。
最初に簡単なプロフィールを紹介しましょう。
名前の由来はギリシア語で、
「糸」を意味する【mitos】と「粒」を意味する【khondrion】を足した造語です。
日本語では『糸粒体』と訳されます。
ただし今日では、そのまま”ミトコンドリア”と呼ぶのが一般的です。

■ ミトコンドリアは何色?

理由はよくわかりませんが、
ミトコンドリアを緑色にイメージする方が多いようです。
「葉緑体」と混同しているのか、
あるいは、トコンドリアに「ミドリ」の文字が隠れているせいでしょうか?

確かに緑色のケースもなくはないそうですが、
通常は赤茶色をしているケースが多いようです。
これは酸化還元に関わる酵素の活性中心に鉄を含んでいるからで、
要は、鉄が錆びたような色をしています。

■ ミトコンドリアは何個ある?

一つの細胞に、ミトコンドリアは1個――
そう勘違いしている方も少なくないようです。
恐らく、細胞核と混同しているんでしょう。

実際には、一つの細胞に、
平均して数百~数千個のミトコンドリアが含まれています。
模式図などではわかりやすいように描かれていますが、
本当はぎゅうぎゅうに押し詰められているわけ。

細胞質の40%はミトコンドリアで占められるといわれ、
成人の身体全体では、
ナンと1兆個の1万倍ミトコンドリアを有するそうです。
驚くなかれ、その総重量は体重の10%を占める!!!
体重60kgの成人なら、重さ6kgの”エンジン”を搭載しているようなもの。

■ ミトコンドリアはどこから来た?

ミトコンドリアは非常にアクティブな細胞小器官(organelle)です。
細胞質中でダイナミックに活動し、
細胞分裂とは関係なく、
常に融合や分裂を繰り返してその形態を大きく変化させます。
そうです!!!
あたかもそれ自体が”生命体”であるかのような挙動を示すわけ。
”生命体”であることを伺わせる証拠はまだある――
ミトコンドリアは独自のDNAを持っているんです。

ミトコンドリアDNA(mtDNA)は、核DNAとは違う特徴を持っています。
なんといっても大きな違いは、母性遺伝するという点です。
父親由来の mtDNA は何らかのメカニズムで消去され、
卵子の持つ母親由来の mtDNA だけが残されます。
一見すると不思議な現象ですが、
ミトコンドリアの特徴を考えれば納得できはず。

細胞内に含まれるミトコンドリアの数は細胞ごとに違います。
卵子には10万個ものミトコンドリアが含まれていますが、
精子にはたった100ヶ程度しかございません。
卵子までたどり着けば良い精子と、
細胞分裂を繰り返して成長していく卵子の違いでしょう。
卵子には圧倒的にミトコンドリアが多いのです。

これだけ差があると、1対1の交換は成立しません。
同じ細胞の中に父親と母親の mtDNA を受け継いだものと、
母親だけの mtDNA を受け継いだものが、
ごちゃ混ぜになっているのはとっても都合が悪いでしょ?
それならいっそのこと、
父親は無視して母親の mtDNA に統一した方が良い。
こと mtDNA という点からは、
子供からみて父親は”赤の他人”に過ぎないのです。 (T_T)

では、mtDNA は何の”設計図”なのか?
mtDNA も二重らせん構造をしていますが、
核DNAがひも状なのに対して mtDNA は環状です。
しかも、それがコードするタンパク質の数は数えるほどしかございません。
ただし数は少なくとも、
エネルギー生産に関わる重要なタンパク質をコードしています。
まさに、mtDNA がエネルギー生産の鍵を握っている!!!

図をクリックすると拡大します
mitochondria-4

図の説明をしておきましょう。
生体エネルギーである ATP 呼吸鎖で合成されます。
呼吸鎖は複合体Ⅰ~Ⅴによって構成されますが、
複合体Ⅰ~Ⅳはまとめて電子伝達系と呼ばれ、
最後の複合体ⅤがATP合成酵素となるわけです。

一例として、複合体Ⅰにご注目ください。
複合体Ⅰの核心はNADH脱水素酵素ですが、
【43】のサブユニット(パーツ)からなるタンパク質の巨大な複合体です。
その内36ヶのサブユニットが核DNAにコードされていて、
残りの7ヶが mtDNA にコードされています。

複合体Ⅱだけは全て核DNA由来ですが、
複合体Ⅲのシトクロムbや複合体Ⅳのシトクロムc酸化酵素、
さらに複合体ⅤのATP合成酵素は mtDNA がないと機能しません。
まさに、ミトコンドリアはエネルギー生産のスペシャリストなのです。

ここで大きな疑問が生じます。
一つの生命は、一種類のDNAによって支配されます。
複数のDNAが存在する場合はキメラ(chimera)と呼ばれ、
高等動物でキメラを作ることは原則的にできません。
免疫による拒絶反応を起こすからです。
しかしミトコンドリアは独自のDNAを有しており、
本来は別の”生命体”であったことを物語るのではないか?
こうした発想から生まれたのが共生説というもので、
1970年、マーグリス(Margulis)によって初めて主張されました。
ちなみに。
彼女は有名な天文学者、カール・セーガンの最初の奥さんでもあります。

しかし、あまりにも奇抜で大胆な仮説でした。
そのため発表当時は見向きもされませんでしたが、
その後のDNA解析技術の進歩により、
今日では、共生(symbiosis)はほぼ確かなことと考えられています。

図をクリックすると拡大します
mitochondria-5

では、どうして共生が行われたんでしょうか?
マーグリスの説は、簡単にいえば、食う-食われる の関係です。
そこで、捕食説とも呼ばれています。
地球が誕生したのが46億年前のこと。
最初の生命が誕生したのは40億年前ですが、
当時の地球には酸素(O2)がほとんど存在しなかった。
生命は嫌気的生命体だったわけです。

ところが27億年ほど前に、光合成をする真正細菌が出現します。
その代表がシアノバクテリア(藍藻)で、
海中の酸素濃度は次第に上昇し、ついには大気中に吹き出し始めた!!!
こうした環境の激変に適応して好気性バクテリアが出現し、
その中にαプロテオバクテリアの仲間がおりました。
このαプロテオバクテリアこそ、今日のミトコンドリアの原型となる”生命体”です。
ミトコンドリアと同じTCA回路や電子伝達系を有し、
好気呼吸によって ATP を合成します。

一方、それまで地球を席巻した嫌気性生物は追い詰められていくばかり。
そこである古細菌はαプロテオバクテリアを捕食し、
それを細胞内に生かしておく離れ業を演じます。
こうして他人のエネルギーを横取りし、
あわせて新しい酸素環境に適応した真核生物が20億年前に出現する――
これが捕食説というものです。

ただし、この説には矛盾点も多い。
果たして、捕食者に供給できるほど余分なエネルギーを生産していたのか?
そんな無駄なことを生命がするわけはなく、
それなら消化吸収した方が手っ取り早いはず。
そもそも、好気的生物と嫌気的生物は住む環境が違うのであり、
両者が接触する機会はあり得ません。

ところがところが、
真核生物の中にも嫌気呼吸をするものがいることが発見された!!!
ある種の真菌(カビ)は、
環境の酸素濃度に応じて好気呼吸と嫌気呼吸を使い分けるのです。
そしてさらに酸素濃度が下がると、
エネルギー生産を呼吸から発酵に切り替えて様々な環境に適応します。

ちょっとややこしくなってきましたか?
ここで言葉の整理をしておきましょう。
人間の呼吸(内呼吸)には酸素(O2)が必要ですが、
それは電子伝達系の最終電子受容体に酸素(O2)を利用するからです。
これを【好気呼吸】といいます。
でも、酸素(O2)じゃないといけないのか?
決してそういうわけではなく、
酸素(O2)以外の化学種を最終電子受容体に利用したってOKです。
その場合が【嫌気呼吸】となり、
硝酸(NO3)を利用する硝酸呼吸などが知られています。
重要なのは酸素(O2)ではなく、むしろ水素(H2)なんです。
もっと厳密にいえば、プロトン(H)と電子(e)が呼吸の”主役”です。

ATP が生体のエネルギー通貨であることは比較的早くからわかっていましたが、
どのようなメカニズムで生成されるかは不明でした。
そのような中、1961年、イギリスの生物学者ピーター・ミッチェル(Peter Mitchell)が、
ATP 合成に関する画期的な仮説を提唱しました。
それが電気化学勾配仮説(化学浸透圧説)というものです。

図をクリックすると拡大します
mitochondria-6

彼はミトコンドリア内膜を挟んだプロトン(H)の不均質性こそが重要だと考えました。
その結果、濃度勾配と電位勾配が生じます。
ミトコンドリア内部のマトリックス(Matrix)はpH8の弱アルカリ性で、
外部の膜間スペースはpH7の中性です。
実に10倍もの濃度差があるんです。
そればかりではありません。
プロトン(H)が少ないマトリックスは「負」に帯電しており、
多い膜間スペースは「正」の電荷を持っています。

こうした濃度差や電位差により、
プロトン(H)は膜間スペースからマトリックスに流れ込みます。
このプロトン駆動力(proton-motive force)を利用して、
ATP を合成するのが呼吸の本質である――
彼はそう考えたわけ。

それから10年以上も経って、
プロトン駆動力を用いる ATP合成酵素(複合体Ⅴ)の存在が明らかにされました。
彼の仮説が正しかったことが証明されたんです。
この小さな”生体モーター”が実際に回転する様が確認されたのは、
さらに下って1997年のこと。
人間を含めた真核生物の”生命力”が生み出されるメカニズムは、
今ようやく明らかにされつつあります。
ヒトゲノムの全解読が完了した今日、
生命科学の最先端は核DNAから mtDNA
さらにATP合成の研究に移っていくような気がします。

話を元に戻しましょう。
呼吸には水素が必要不可欠ですが、いったいどこから手に入れるんでしょうか?
それがTCA回路(クエン酸回路・クレブス回路)の役割です。

図をクリックすると拡大します
mitochondria-7

TCA回路では、脱水素反応によって16ヶもの水素が発生します。
これが 解糖系やピルビン酸の脱水素で生じた水素とあわされ、
NADH FADH2 という形で運ばれます。
その行き先はミトコンドリア内膜の電子伝達系――
電子伝達系では電子(e)のエネルギーを利用して、
プロトン(H)をマトリックスから膜間スペースに汲み出し,
それによってプロトン駆動力を生成するのです。
このとき、酸素や硝酸などの化学種が、
最終的に電子(e)を受けとるというわけ。
電子(e)が増える反応ですから、これを「酸化」といいます。

お次は、電子伝達系と連動(coupling)したATP合成酵素の出番です。
ここでは ADP にリン酸(Pi)が結合されて ATP が産生される。
つまり「リン酸化」されます。
そこで一連の反応は酸化的リン酸化と呼ばれ、
呼吸とは酸化的リン酸化である――
一言でいえば、そういって宜しいわけです。

ところが、無酸素に近い状態になると酸化的リン酸化が機能しません。
こうした状況でもエネルギーを生産できるのが解糖系で、
これが発酵というものです。
この発酵を【嫌気呼吸】に含めることもありますが、
厳密には正しくありません。
【呼吸】と【発酵】では ATP を合成するメカニズムが異なるんです。

さて、ミトコンドリアの祖先となったαプロテオバクテリア――
酸素濃度が極端に低い場合には、
発酵によってエネルギーを生産したと考えられています。
地球の酸素濃度は長い歳月をかけて上昇したわけですから、
そう考える方が自然でしょう。
嫌気性生物が、一気に完全な好気性生物には進化しないのです。

そこで、発酵というエネルギー生産を見てみましょう。
こちらでも脱水素反応によって水素が生成されますが、
これが利用されることはなく、
むしろ細胞に有害な作用をもたらします。
そこで水素ガス(H2)として排泄される。
これに目をつけたのが水素を利用するメタン菌で、
メタン菌の取り込んだ水素排出性細菌がミトコンドリアの起源――
これが捕食説に代わる最新の水素説と呼ばれるものです。

ただし、水素説もパーフェクトではないみたい。
捕食説にも言えることなんですが、
宿主細胞となった古細菌にはメリットはあっても、
取り込まれたミトコンドリアの祖先は悲惨です。
利用されるだけで、これでは共生者というより奴隷に近い…… (+_+)
”他人”のために、何十億年もエネルギーを貢ぎ続けてきたというのでしょうか?
しかも、真核生物の元になった古細菌はメタン菌ではなく、
むしろ好熱菌のようなタイプらしいこともわかってきました。

そこで、こんな風には考えられないでしょうか。
あくまでも、私の勝手な想像です。その点、ご了承を……
ミトコンドリアの祖先が呼吸を始めた頃、
太古の海のpHは6.7程度だったと考えられています。
この点が重要です。
これなら細胞内のpHを8にしてやれば、
十分なプロトン駆動力が生まれます。
忘れないで頂きたいのですが、
共生する前には、細胞膜を1枚隔てた外側は海水だったということです。

ところが、海水の酸素濃度が上昇し始めます。
反対に二酸化炭素濃度は低下するので海のpHは高くなる――
つまり、アルカリ化が進んだわけ。
そして約20億年前には、
現在と同じpH8.2程度になったと考えられています。

こうした”環境破壊”が、ミトコンドリアの祖先を危機に陥れます。
もうおわかりでしょう。
細胞の中がpH8、細胞の外もpH8では、
プロトン駆動力が生じないんです!!!
酸素濃度の上昇は、
実は呼吸というエネルギー生産には不都合な事態だった……

図をクリックすると拡大します
mitochondria-8

そこでミトコンドリアの祖先が目をつけたのが、
古細菌の”体内”だったのではないか?
そのpHは5~7の弱酸性から中性で、
これならプロトン駆動力を確保できます。
しかも酸素(O2)を最終電子受容体に用いれば、
桁違いのエネルギーを手に入れることができる!!!
こうして真核生物は、
完全な好気呼吸生物(絶対好気性生物)に進化したというわけです。

【後補】
ミトコンドリアは二重の膜に包まれていますが、
内膜はミトコンドリア由来で、プロトン(H)を通しません。
一方、外膜は宿主細胞由来で、プロトン(H)が自由に通過できます。
そのため、膜間スペースと細胞質基質のプロトン(H)の濃度は等しくなります。


一方、古細菌の側にもメリットがあったはずです。
脱水素酵素は酸素に弱く、
酸素濃度の上昇は嫌気的発酵にとっても危機でした。
酸素に強いミトコンドリアの祖先とタッグを組めば、
より高い抗酸化能を手に入れることができます。
しかも、今までは捨ててきた水素を、
エネルギー生産に回すこともできちゃう。
まさに、理想的な「Win-Win」の関係でございます。
念のために繰り返しますが、あくまでも私の勝手な想像です……

そろそろ、まとめましょう。
プロトン駆動力が円滑に発揮されるには、
適度な酸素、そして栄養(グルコースや脂肪)が必要不可欠です。
これを全身に補給するのが、
総延長が地球を2周半もする長大な血管網に他なりません。
動脈硬化はもちろんのこと、
貧血や低血圧ももっと重大視する必要があるのではないでしょうか?
血管や血流は、エネルギー生産を支える”ライフライン”なんです。

しかも酸素供給が不足すると、
ミトコンドリアには過大な負荷がかかります。
複合体Ⅳが上手く機能せず、行き場を失った電子(e)が、
複合体Ⅲの段階で大量の活性酸素(ROS)を発生させちゃう。 (>_<)
いわば、”不完全燃焼”を起こすようなもんだとお考え下さい。
活性酸素は核DNAを損傷するといわれていますが、
膜で厳重に保護された核DNAに比べて、
mtDNA は”裸のまま”で活性酸素に曝されています。
よほど突然変異を起こすリスクが高く、
その発生頻度は核DNAの5~10倍になるそうです。

加えて、mtDNA の数はとてつもなく膨大。
一つの細胞に2copyの核DNA(2倍体)と比較して、
一つのミトコンドリアは5~6copyもの mtDNA を有しています。
一つの細胞に含まれるミトコンドリアが1000ヶとした場合、
一つの細胞にナンと5000~6000copyもの mtDNA がある計算になる。
その分、突然変異を生じる確率も高くなるでしょ?

もちろん、酸素を利用するからには、
それに相応しい抗酸化システムを有しています。
中でも、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)は、
電子伝達系の近傍に集中的に局在している。
しかし、真綿で首を締め付けるように、
じわじわとダメージが進行していくでしょう。

ミトコンドリアは時間と共に元気をなくしていき、
ついには修復機能が上手く作動しなくなる。
これが老化(aging)という現象であり、
好気呼吸を行う生物の悲しい宿命……
100歳を超えて元気に生きられる方が、
そうそういらっしゃるものではございません。
不老不死は呼吸という自然の摂理に反するのです。

ただし、老化と年齢は必ずしも相関しない――
私はそう考えています。
ミトコンドリアに元々不具合があったりメンテナンスが悪ければ、
年齢以上に”老化”が早まるのではないでしょうか?
あるいは、ミトコンドリアの絶対数が少ない方もいるに違いない。
そのような方は疲れやすく、意欲も沸いて来ないはずです。
免疫力が低下するので、様々な病気にも罹りやすくなるでしょう。
化学物質過敏症(MCS)もこうした”病気”の一種であり、
体内のエネルギー生産が低下している――
これが現在の私がたどり着いた結論です。

これをわかりやすい言葉で表現すれば、
自然治癒力の低下、あるいは、生命力の低下といって差し支えありません。
しかし”病気”を治癒するのに、
間違っても代替医療に依存しちゃいけない!!!
苦しみ悩んでいる方ほどニセ科学に魅せられやすいものですが、
冷静な科学的思考を失うことが最も危ういことなのです。

最後に。
自然回帰の流れが強まる中、
近年、アウトドアがブームとなっているようです。
登山や山歩きが中高年や女性に人気らしい……
でも、自然を甘く見ると手痛いしっぺ返しを受けることになります。
”自然”の中にお出かけの際には、
くれぐれも肌を露出させないようご注意ください。
というのも、リケッチア症(Richettsia)の危険があるからです。

リケッチアは病原性細菌の一種(グラム陰性菌)で、
ダニやシラミなどの節足動物を媒介にして感染します。
世界的に有名なのはコロモジラミを媒介とする発疹チフスですが、
日本によく見られるものとしては、
マダニを媒介とする日本紅斑熱や【恙虫】を媒介とするつつが虫病が知られています。

つつが虫とはケダニの一種ですが、本来は想像上の虫を指していました。
【恙】は【憂】に通じ、転じて「災い、病気」を指します。
そこで挨拶の言葉として用いられる、
恙なくお過ごしでしょうか――という言葉は、
「病気もせず、お元気にお過ごしでしょうか」という意味になります。

ところが古来より、
人を死に至らしめる恐ろしい病のあることが知られていました。
虫に刺された指し口があることから、
古人は病気をもたらす”疫病虫”の仕業と考えたんでしょう。
そこで、これを【恙虫】と呼んだのです。

  恙は人を刺す虫である。
  心の臓を咬むこともできるので、
  人は常にこれに苦しめられている。


2世紀に著された中国の『風俗通儀』という書物には、
こんな風に紹介されております。
「心の臓を咬む」という記述があることから、
死に至ることも多かったことを伺わせます。
今日、この病の正体はリケッチアであろうと考えられています。
そこで――
この病気を媒介するダニが【恙虫】と命名されたわけ。

リケッチア症に共通する症状は39~40℃にも達する高熱と、
この熱を逃すために毛細血管が拡張して起こる紅斑状の発疹です。
激しい頭痛や悪寒を伴い、
重症化すると血管の激しい炎症反応を誘発します。
これが原因で多発的な血栓を生じ、
血小板や凝固因子が枯渇すると敗血症のような出血傾向に転じます。
こうして多臓器不全や脳出血を起こし、
肺炎・肝障害・髄膜炎などを併発する。
そして最悪の場合には――、死に至ります。

これは決して遠い昔のお話ではございません。
”自然”の中には危険がいっぱい潜んでいるんです。

ところで。
リケッチアは宿主の血管内皮の細胞内で増殖します。
細胞外ではたちまち死んでしまい、
単独では生きていけない細胞内寄生菌です。
そして、αプロテオバクテリアに属す!!!
実はDNA解析の結果、ミトコンドリアとの近似性が指摘されているのです。
ミトコンドリアの祖先はリケッチアのようなαプロテオバクテリア――
今日では、これが定説となっています。

そこで、こんなドラマが繰り広げられたのかも……
酸素濃度の上昇で危機に追い込まれたαプロテオバクテリアは、
生き残りをかけて他の細胞内への侵入を試みます。
受動的に食べられたのではなく、
自らが進んで能動的に寄生(parasite)したのではないでしょうか。
そうしなければ、
呼吸というエネルギー生産システムを維持できなかったからです。

しかし、寄生された宿主はたまったものではない。
激しい高熱で死に絶えてしまいます。
ところが、好熱菌は違った!!!
”熱を好む”古細菌ですから、40℃くらいではビクともしません。
こうして、異なる生命体の共生が始まった……

このような進化は、
生命の長い歴史の中でもたった一度だけの出来事でした。
まさに、奇跡的な出来事だったんです。
誕生した真核生物は、素晴らしい可能性を秘めた【hopeful monster】でした。
ここから真菌類や原生生物、さらには動物や植物が誕生したのです。

このような生物多様性が実現されたのも、
真核生物がミトコンドリアを手に入れ、
潤沢なエネルギーを利用することができるようになったからに違いありません。
生命はエネルギーによって駆動される――
それなのに。
エネルギー生産を支える複雑なネットワークのどこかに問題が生じれば、
検査では”異常なし”でもなんとなく元気が出ない……
当事者はとっても辛く、病気のような状態になってしまうのです。



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